免疫チェックポイント阻害剤など各種治療の進歩にも関わらず、悪性胸膜中皮腫(MPM)の予後は依然として極めて不良であり、新たな治療法の開発が急務である。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、様々な癌種において悪性度に関与しており、これを標的とした治療の有効性がマウスなどの前臨床モデルを用いた研究で報告されているが、一般臨床への応用には未だ至っていない。 同所性中皮腫マウスモデルの腫瘍内(胸水中)免疫微小環境をFlow cytometryで解析し、胸水中のマクロファージに2つのサブセット(単球由来のsmall pleural macrophages:SPMと組織常在性のlarge pleural macrophages:LPM)を同定した。SPMは腫瘍投与後、腫瘍微小環境で急速に増加し、腫瘍進展に伴いCD206陽性となり、M2様TAMの大部分に寄与した。SPM M2様TAMは腫瘍形成能を有した。未治療の悪性胸膜中皮腫患者の胸水・腫瘍の解析から、SPMの遺伝子シグネチャーの同定を試みた。特異的な治療標的となる可能性がある複数の遺伝子のうち、TREM2遺伝子の欠失はSPM M2様TAMの減少をもたらし、代償的にLPMが増加し、腫瘍増殖が抑制された。 SPM M2様TAMは、悪性胸膜中皮腫に対する新規免疫療法の標的となりうることが示唆された。SPMを標的とした新規免疫療法を臨床応用できるよう、さらなる検討を行っているところである。
|