研究課題/領域番号 |
22K16575
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
石原 駿太 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (60751279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多重免疫染色 / 重症筋無力症 / 胸腺腫 |
研究実績の概要 |
2023年度は、重症筋無力症(MG)と関連する遺伝子候補群を同定し、前年度に確立した多重免疫染色により識別した胸腺腫胸随伴リンパ球が、これらの遺伝子と関連するか検討した。まず胸腺上皮性腫瘍のThe Cancer Genome Atlas (TCGA)データベースを用いて、重症筋無力症の関連遺伝子の候補分子を検索した。TCGAに収載されているBulk RNA-seqデータから、炎症関連経路の遺伝子を解析対象とし、加重遺伝子共発現ネットワーク解析により共発現変動遺伝子群を作成し、MGの有無と胸腺腫組織型との関連を解析した。MGと相関する共発現変動遺伝子群のうち、1つは正の相関を示すモジュール、1つは負の相関を示すモジュールが同定された。さらにこれらは、胸腺腫の組織型にも特徴的な発現の挙動を示し事が確認できた。特にTypeB2ではMGと同様の発現挙動を示し、TypeABではMGと逆の発現挙動を示していた。これらの遺伝子群を遺伝子セット濃縮解析すると約半数の遺伝子がPI3K-Aktシグナル経路の構成分子である事が確認された。 手術検体を用いてPI3K-Aktシグナル経路のHub分子となるAktリン酸化抗体の免疫染色を行うと、MG合併胸腺腫では5例中4例で発現し、MG非合併胸腺腫で発現を認めなかった(0/5)。 また多重免疫染色でCD45/CD4/CD3/Bcl6/Foxp3/CD95/CCR7/IL17によりナイーブT細胞、濾胞性 T細胞、制御性T細胞(Treg)、Th17を識別すると、MG合併胸腺腫ではTh17が有意に上昇しており、一方で、MG非合併胸腺腫ではTregが有意に上昇している結果となった。Akt陽性胸腺腫でも同様にTh17が上昇し、Akt陰性胸腺腫ではTregが上昇する傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では胸腺上皮性腫瘍の重症筋無力症に関する遺伝子候補群を同定する事ができた。また前年度に確立した多重免疫染色法による胸腺腫随伴リンパ球のナイーブT細胞、濾胞性 T細胞、制御性T細胞(Treg)、Th17の識別で、MGの合併とTh17およびTregが関連していることがわかった。同定した遺伝子と、Th17やTregの関連を解析し、胸腺腫の重症筋無力症を予測するbiomarkerの候補として有用であるかどうかを確認する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2024年には、2023年度で同定した遺伝子群の中でPI3K-Akt経路に着目し、これらの遺伝子が臨床検体でMGと関連を示すかどうかを確認し、多重免疫染色でリンパ球の検索を行う事で、重症筋無力症の増悪を予測できるかどうかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
胸腺腫随伴リンパ球の多重免疫染色を実施し、画像データの解析を発注しているが、まだ解析結果が納品されていないため、会計処理できていない。画像データの解析は、SCREEN Holdingに依頼し、リンパ球定量解析について150,000円の見積もりで、疑似蛍光免疫染色の画像として数万円の追加の業務委託料が発生する予定。
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