研究課題/領域番号 |
22K16584
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
志満 敏行 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 呼吸器外科, 医員 (70738781)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍随伴マクロファージ / がん微小環境 / 所属リンパ節間質 / CD169陽性マクロファージ / 非小細胞肺がん |
研究実績の概要 |
がん細胞と間質の相互作用により作り出されるがん微小環境はがんの浸潤・転移に関連する重要な因子であり、腫瘍間質に浸潤する腫瘍関連 マクロファージ(Tumor-associated macrophage: TAM)はリンパ節転移・予後との関連が報告されている。また、所属リンパ節での免疫応答も浸潤・転移に関連する重要な因子である。本研究では、腫瘍間質に浸潤するTAMに着目し、所属リンパ節間質形成に関与することを明らかにし、microarray databaseなどを組み合わせて解析を行うことにより、所属リンパ節間質を規定するTAM関連分子の同定及びその制御メカニ ズムを明らかにする基礎的データを得ることである。腫瘍間質TAM浸潤とCD169陽性rLNsMφの関連の解析を目的に臨床病理学データを取得済みのヒト肺がん手術検体のパラフィン切片を用いて、免疫組織学 的各種特異的マーカーによる染色を行い、PD-L1の発現スコア化、TAM浸潤数を定量化、CD169r陽性LNsMφ発現のスコア化を行った。PD-L1発現の多 寡・遺伝子変異の有無・所属リンパ節転移/術後再発の有無でそれぞれの癌間質TAM浸潤とrLNsMφのCD169発現を比較・解析し、TAM浸潤とのCD169陽性rLNsMφ発現の関連が有意である可能性が示唆された。また、解析対象の臨床病理学データよりN1領域へのリンパ節転移と肺癌術後患者との予後因子についての知見を主として得られた解析結果を国内学会にて発表した。これらの発表内容は現在論文化を行っている。引き続き、腫瘍間質TAM浸潤によって産生されるCD169陽性rLNsMφを抑制するサイトカインの同定や腫瘍間質TAM浸潤によるCD169陽性rLNsMφ発現変化を測定すべく、分子生物学、生化学、遺伝子工学、病理組織学的手法を駆使して、包括的に解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では次の3つの項目に着目し、機能解析を行っている。 1)腫瘍間質TAM浸潤とCD169陽性rLNsMφの関連、2)腫瘍間質TAM浸潤によって産生されるCD169陽性rLNsMφを抑制するサイトカイン3)腫瘍間質TAM浸潤によるCD169陽性rLNsMφ発現変化 1)については概ね予定していた解析を終えているが、2)、3)に関する解析に着手できていない。解析にはまとまった期間と資料が必要となるため、それらの確保を行った上で適宜実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は主に次の2つの項目についての解析を行う予定である。2)腫瘍間質TAM浸潤によって産生されるCD169陽性rLNsMφを抑制するサイトカイン:①候補サイトカインの同定:TAMより分泌されるrLNsへの 単球の遊走を阻害するケモカインやrLNsでのCD169陽性Mφ分化抑制に関わるサイトカインの発現レベルを網羅的に解析し、高発現するものを同定する。高発現するものは更に定 量PCR、イムノブロット法を用いて発現解析する。②肺癌細胞株との共培養による候補サイトカインの発現解析:M2a/M2c Mφの単培養や各種肺 腺癌細胞株との共培養を行い、定量PCR、イムノブロット法を用いて候補サイトカインの分泌量の変化を解析する。③抗PD-L1抗体による候補サ イトカインの発現解析:M2a/M2c Mφにおいて抗PD-L1抗体で処理し、定量PCR、イムノブロット方を用いて候補サイトカインの発現量の変化を 解析する。 3)腫瘍間質TAM浸潤によるCD169陽性rLNsMφ発現変化:①TAMによるCD169陽 性Mφ発現抑制機構の解析:ヒト由来M2 MφとCD169陽性Mφとの共培養を行い、蛍光免疫染色によるCD169陽性Mφの定性や定量PCRによりCD169 のmRNA発現レベルを測定する。②TAM由来液性因子の同定:TAM産生サイトカインで処理したCD169陽性Mφの定量PCRを行い、CD169発現レベル の解析を行う。更に、候補サイトカインでCD169陽性Mφの処理を行い、イムノブロット、フローサイトメトリーにてもCD169発現レベルが同様 の変化を示すかの確認を行う。さらに、M2a/M2c MφとCD169陽性Mφの共培養から、培地中の候補サイトカインの発現レベルの測定や候補サイ トカイン阻害薬投与によるCD169発現レベルの変化を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養、定量PCRなどに関する解析に今年度は着手できておらず、それに関わる物品の購入がなかったこと、またCOVID-19流行下で予定していた国際学会への参加・発表などができなかった事により次年度使用額が生じた。今年度は予定していた解析や学会参加・発表ならびに論文化などに助成金を使用予定である。
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