研究課題
ほとんどの生物には24時間周期で繰り返される概日リズムが存在する。この概日リズムは各組織に発現している時計遺伝子群により制御されているが、集中治療の必要な患者では環境要因や基礎疾患、重篤な病態により概日リズム障害を起こすことが示唆されている。健常な血管内皮の内腔面は糖タンパク質からなる層状のグリコカリックスに覆われてり、血管透過性の調節、白血球の接着や遊走の調節に寄与している。血管内皮グリコカリックスは健常状態では4-6時間でTurnoverを繰り返しており、この調節に時計遺伝子が関与している可能性が考えられる。また、時計遺伝子と免疫応答の関連が示唆されており、時計遺伝子の1つであるBmal1が局所的な炎症の調節に寄与することが考えられている。本研究では血管内皮グリコカリックスに対する時計遺伝子Bmal1の影響をBmal1ノックアウトマウスにより明らかにし、炎症下での血管内皮グリコカリックスに対する影響を検討する予定であった。しかしながらBmal1ノックアウトマウスが受胎せず継代が困難であり、同じく時計遺伝子であるDec1ノックアウトマウスの解析を行っている。現時点でPhenotypeの異常は認めていない。また、これと並行して常時ライトがついている部屋で10週齢の雄性マウスを72時間飼育し概日リズム障害モデルマウスを作成した。Controlマウスは12時間ごとにライトが点灯消灯を繰り返す環境で飼育した。これらのマウスにLPSを15mg/kgで腹腔内投与し、血管炎を誘発させ腸管の観察を行った。概日リズム障害群の結腸組織ではControl群に比べ粘液を放出するゴブレット細胞数が有意に増加していた。走査型電子顕微鏡像では概日リズム群の絨毛を栄養する毛細血管の傷害が認められた。また概日リズム障害群においてKi67陽性細胞数の増加が認められた。
2: おおむね順調に進展している
Bmal1ノックアウトマウスが受胎せず継代が困難であり現在は同じく時計遺伝子であるDec1ノックアウトマウスの解析も並行して行っている。また並行して概日リズム障害マウスでの解析が進んできているため、遅れは取り戻せたと考えている。
引き続きDec1マウスの解析を行うとともに、概日リズム障害マウスでの腸管以外の臓器も検討をおこなう。
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