研究課題/領域番号 |
22K16644
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
榎木 裕紀 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (50813854)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | サルコペニア / 骨格筋萎縮 / 坐骨神経切断 / 敗血症 / 腎障害 |
研究実績の概要 |
予備的検討により坐骨神経切断(DN)処置を施したマウスでは、盲腸結紮穿刺(CLP)誘発敗血症モデルマウスの生存率が低下する傾向であることを確認しており、さらに炎症の増悪が見られることを示していた。本年はサルコペニアが敗血症病態に及ぼす影響の評価を目的とした検討を行い、さらにマウスのN数を十分に追加し、詳細な各種臓器(腎臓、肝臓、肺)障害の評価、血液パラメータ、血中菌量、血中サイトカイン量を評価した。その結果、DNマウスでは、sham処置マウスと比較して、有意な生存率の低下(Sham vs. DN = 63% vs. 35%; P < 0.05)が観察された。また血中菌量や窒素酸化代謝物([NO2-+ NO3-])濃度の上昇および血小板数の低下がみられ、敗血症病態が増悪していることが確認された。臓器の評価では、とくに腎臓においてDN群では腎障害マーカー(neutrophil gelatinase-associated lipocalinおよびkidney injury molecule 1)の遺伝子およびタンパク質発現が上昇し、腎障害の増悪が認められた。また同様にDN群は血中の炎症性サイトカイン(tumor necrosis factor-α、interleukin-1β)および抗炎症性サイトカイン(interleukin-10)の上昇が持続し、炎症と抗炎症バランスの破綻が確認された。この機序として、酸化ストレスおよび窒素化ストレス、さらに腸内細菌叢の変化による影響について検討した。その結果、腎臓および肝臓では、窒素化ストレスレベルがsham群よりもDN群で高かったが、腸内細菌叢については差はなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
坐骨神経切断による骨格筋萎縮モデルマウスにおいて、敗血症病態の増悪に関する詳細な病態解析が終了し、学会にて発表を行い、さらに論文を発表した。すでに血液や骨格筋組織からエクソソームを回収し、動物への投与による評価を実施している。エクソソームの関与の評価については2022-2023年度の計画としており、以上のことから概ね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、現在検討を進めている、エクソソームによる敗血症増悪機序についてin vivoによる評価を継続して行う予定である。そのためモデルマウスの血液ならびに骨格筋からエクソソームを回収し、マウスへの投与実験を行う。またDNによる敗血症病態増悪がマクロファージ細胞を介した機序であることを確認するために、マウスから免疫細胞を回収し、フローサイトメトリーを用いて、免疫細胞の解析も進める予定である。免疫細胞集団の解析は、当初の研究計画には記載していなかったが、敗血症病態増悪においてマクロファージとエクソソームのクロストークが関与していることを明らかにするためにも、sham群とDN群間での敗血症後の免疫細胞の変動の評価は重要であると考えられるため、実施する予定である。
|