研究実績の概要 |
本研究の目的は、挫滅症候群(CS)の早期診断と有効な治療法の開発を行うことである。我々はこれまでにMRI装置を用いたMRスペクトロスコピー法(MRS)がラットCSモデルにおいて下肢筋組織の虚血性変化を鋭敏に反映し、超早期診断に有用であることを報告している(Ohta H et al., Diagnostics, 2021)。そこで本研究はCS受傷後の筋組織の回復過程である急性期から慢性期においてもMRSが有用な診断ツールになり得るのか、及びCSに対する有効な治療法を探索するものである。 2年目の研究では、以下の実績を達成した。 1. CSラットモデルの長期的評価方法の確立:1年目はCSラットモデルの急性期変化をMRSにて評価する方法を確立したが、今年度は下肢筋組織の回復課程を長期的に観察し、MRSおよび血液検査により客観的なデータ収集方法を確立した。さらに、電子顕微鏡およびHE染色などの組織学的検査法を用いた評価方法のプロトコルを構築した。 2. CSラットモデルの筋組織回復率:モデル作製2週間後、MRSと動脈血採血検査を行ったところ、無治療群においては下肢筋組織のダメージが完全に回復していないことが明らかになった。 3. 効率的な間葉系幹細胞収集および培養上清液の取得:間葉系幹細胞培養による効率的な細胞収集方法の確立に成功し、大量の細胞を安定して収集できるようになった。さらに、間葉系幹細胞培養により生じた培養上清液の取得方法を確立し、培養上清液を用いた治療研究の基盤を築いた。 これらの実績により、CSの治療における早期診断および治療法の開発に向けた重要な基盤が築かれた。
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