研究課題/領域番号 |
22K16650
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高見 浩数 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50548625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胚細胞腫 / 中枢神経 / ゲノム構造異常 / 腫瘍マーカー / メチル化解析 / RNAシークエンス / 発現解析 / コピー数異常 |
研究実績の概要 |
中枢神経胚細胞腫(CNSGCT)は小児・AYA世代に好発し、小児脳腫瘍の中では我が国において2番目に頻度の高い悪性脳腫瘍であるが、その発生機序は謎に包まれている。我々はCNSGCTの病態解明を進めるため世界最大の腫瘍コホートを構築し、これまでにcoding領域の遺伝子変異、メチル化解析、コピー数異常解析、腫瘍間質の免疫細胞の解析を発表してきた。この中でジャーミノーマでは半数以上の症例で遺伝子変異が見つかった一方で予後が悪い非ジャーミノーマ症例においては変異が乏しい(MAPK/PI3K経路で16%程度)ことが判明した。ジャーミノーマの特徴的な低メチル化、GCTのゲノム不安定性、免疫細胞の高いPD-L1発現率などは病態解明に大きく貢献し将来的には治療につながる可能性があるが、標的治療につながる特定のゲノム異常が同定できていない。 悪性腫瘍において腫瘍横断的に遺伝子変異やゲノム構造異常を標的とした治療が拡大し、またそれを各症例で同定するためのオンコパネル検査が拡充する中で、CNSGCTは乗り遅れている。CNSGCTの病態の背景にあるゲノム異常を探索しきれていないからである。 頭蓋内胚細胞腫ゲノム解析コンソーシアムに存在する豊富で貴重な凍結検体・臨床データベースを用い、世界に先駆けて治療ターゲットの探索・同定と、その先にある標的治療に運ぶことがこの研究の主眼であり使命である。 これまでに合計27症例54検体(凍結標本・末梢血コントロール)を対象に、東京大学大学院新領域創生科学研究科生命システム観測分野(鈴木穣教授)の研究室にてOxford Nanopore Technologies社のロングリードシークエンサーPromethIONを用いてシークエンスを行った。現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iGCTコンソーシアム及びJCCG(日本小児がん研究グループ)に登録された症例(重複なし)から腫瘍凍結検体と血液DNAのペアがある症例を選択し、iGCTコンソーシアムより19症例38検体、JCCGより8症例16検体、合計27症例54検体(凍結標本・末梢血コントロール)を収集した。これらを東京大学大学院新領域創生科学研究科生命システム観測分野(鈴木穣教授)の研究室にてOxford Nanopore Technologies社のロングリードシークエンサーPromethIONを用いてシークエンスを行った。現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
ロングリードシークエンスの解析を行っている。データの解析により、第一の目標を非ジャーミノーマにおけるゲノム構造異常解析とnon-coding領域におけるゲノム異常の発見とし、第二の目標を細胞を用いた機能解析や動物実験による病態解明とする。 ゲノム構造異常(逆位、挿入、欠失、転座、クロモスリプシスなど)を検出すると同時に、non-coding領域の塩基の変異を検出する。この中でrecurrentに発見されるものの候補を作成し、他症例の非ジャーミノーマ(validation set)においてDNAからのPCR、またはcDNAからのRT-PCRにてvalidationを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進んでおり、これまでの成果を検証する実験の拡充やその成果を発表するための海外学会参加などに費用を予定しているため。
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