研究課題/領域番号 |
22K16654
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 定之 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (00837148)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | spinal cord injury |
研究実績の概要 |
これまで研究代表者らがin vitroで合成オリゴHSによる軸索再生効果示した実験と同様の実験の候補として2種類の低分子ヘパリン(薬剤A、Bとする)を選定した。まず、Surface Plasmon Resonance法(SPR法)を用いて、薬剤A、BとCSとPTPRσとの関連を検討したAとBを比較したところ、AでよりCSとPTPRσの結合を分離する作用が認められた。次に、Isothermal Titration Calorimetry (ITC)で薬剤A、BとPTPRσとの反応性について検討したところ、Aでより高い結合性を認めた。また、研究代表者らが独自に作成したEGFRへのリン酸化をみることでPTPRσの細胞外の状態を判定可能にしたPTPRσの細胞外ドメインにEGFRの細胞内ドメインを結合させたキメラレセプターを用いて、Western Blotting(WB)でリン酸化を判定することで薬剤A、BがPTPRσを多量体にするかを検討したところ、AでよりPTPRσを多量体にすることが明らかとなった。さらに脱リン酸化酵素であるPTPRσはCSで活性化されることがわかっており、HEK293Tを用いてv-srcでリン酸化し、その上でPTPRσを用いて脱リン酸化させたモデルに薬剤A、Bを加えて、PTPRσの脱リン酸化作用に対する効果を検討したところ、AでPTPRσの脱リン酸化作用を抑制していた。次にコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)をコーティングした培地でマウスのDorsal Root Ganglion(DRG) cultureを行い、薬剤Aと共に培養すると通常であればCSPGを乗り越えて伸長出来ない軸索がCSPGを乗り越えて伸長していた。in vitroでは薬剤Aで合成オリゴHSによる軸索再生効果と同様の効果を認めた。今後はin vivoでの実験を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度はin vitroで選定した低分子ヘパリンの軸索再生効果の検討で、合成オリゴHSと同様の効果を示すかを検討し、in vivoで投与実験を行う低分子ヘパリンの絞り込みを行う予定であった。選定した薬剤A、Bを用いて、当初予定していたSurface Plasmon Resonance法(SPR法)、Isothermal Titration Calorimetry (ITC)、Western Blotting(WB)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)をコーティングした培地でマウスのDorsal Root Ganglion(DRG) cultureを、行うことが出来た。選定した薬剤A、Bのうち、Aに関しては合成オリゴHSと同様の効果を認めた。そのため、今後行う予定であるin vivo実験を開始する前にある程度候補薬剤の選定が行えたため、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初から予定していた通りin vitroでの候補薬剤の選定を行うことが出来た状況である。今後は当初の予定通りin vivo実験を行っていく予定である。主に予定している実験としてはラットの脊髄損傷モデルで候補薬の投与による治療効果の検討を行っていく。SD ratを用いてIH impactorで200Kdynで重度の胸髄損傷モデルを作成し、選定した低分子ヘパリン投与群とコントロール群として生理食塩水投与群の2群で比較検討を行う。投与方法はそれぞれの選定した低分子ヘパリンの投与方法と同様の方法で行う。投与量はまずは人で適応されている血栓予防の投与量の最大に近い量でラットの体重に換算して投与を開始し、結果次第で投与量を増減し、安全で最適な量について検討。投与開始時期は抗凝固作用がある薬剤であり、受傷直後は血腫形成の危険性があり、低分子ヘパリンが術後使用される場合は術後24時間で異常出血ない場合とされている薬剤があり、まずは受傷後24時間から投与開始予定とする。また投与開始時期に関しても効果次第で、受傷後1週間後や1ヶ月など亜急性期や慢性期のモデルでも検討予定。脊髄損傷に対する効果判定は受傷後84日まで行う。運動機能に関してはBBBスコアを用いて受傷後1、3、5、7日目、その後1週間ごとに評価。感覚機能に関してはtouch test(fon frey filamentを用いた評価)を受傷1週後から1週間ごとに評価し、深部感覚に関してfoot fault testで受傷後56日目、84日目で評価し、さらに受傷後84日目に麻酔下にmotor evoked Potentialを用いた電気生理学的検討を行い、その後、sacrificeし、組織学的検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね予定通りであるが、in vivoの実験は次年度から開始することとなったこと、今年情報収集のために参加した国内学会はwebでの参加となったことに加えて、発表を行った国際学会は日本で開催されており、旅費を申請しなかったため、当初の予定より使用金額が少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度にin vivoに必要な物品を当初予定していたより多く購入する予定である。また、学会に関しては原則現地参加の学会が増えており、次年度は旅費の申請額が今年度より大きくなる見込みである。
|