公共のデータセットを用いた解析では、膠芽腫のsubtypeの中で最も予後不良なmesenchymal subtype、ANXA2高発現患者それぞれで骨髄系細胞の浸潤が多いことが分かった。また、免疫染色を用いた自施設膠芽腫患者の解析でも、ANXA2およびOSMRの発現と腫瘍関連マクロファージの浸潤は相関が認められた。更に、ヒト膠芽腫組織を用いたsingle cell RNA-seq解析よりOSMや免疫抑制系細胞のCCL2は主に骨髄系細胞から分泌され、ANXA2-OSMR経路は細胞外からのOSM依存性にANXA2の発現を増加させ正のフィードバックループを形成することが分かった。これらの結果により、ANXA2-OSMR経路は骨髄系細胞に作用して抗腫瘍免疫応答を抑制する微小環境を形成し、さらに骨髄系細胞とOSMを介して正のフィードバックループを形成しこの経路をより活性化することが示唆されている。 現在、患者由来膠芽腫幹細胞に対してウイルスベクターを用いてANXA2を恒常的に過剰発現した細胞およびOSMRを発現抑制した細胞を樹立し、これらをヒト化マウスおよびC57Bl/6マウスに移植し、免疫染色およびflow cytometryを用いて免疫細胞の浸潤を評価をしている段階である。また、ヒト末梢血単核細胞から分化させたマクロファージやヒト単球細胞株、マウス骨髄系細胞株などを準備しており、ANXA2過剰発現膠芽腫細胞、OSMR発現抑制膠芽腫細胞を用いてtranswell assayを行い、マクロファージやマイクログリアの遊走能の変化を評価中である。
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