マルチサンプリングにより採取したヒト膠芽腫手術検体を用いて、空間情報を追加した単一細胞マルチオミクスを行う。採取部の空間情報は、術中のナビゲーション画像、病理画像として保存する。さらに、DNAバーコード付き細胞表面マーカー抗体(Hashtag抗体)を用いたCITE-seqを行う。ハッシュタグ法およびCITE-seqを併用したシングルセル及びシングル核マルチオームライブラリー構築のプロトコール確立のため、本年度は膠芽腫20症例のサンプル調整の検討を行った。物理的及び酵素反応による一細胞化処理、Debris、赤血球除去、凝集細胞のフィルタリングの条件検討を行い、安定して生存率80%以上のサンプルを調整することが可能となった。これまでに4症例14箇所のサンプルからシングルセル及び核ライブラリーを作成しシークエンス解析を行った。シークエンスデータの解析の結果、腫瘍の中央部ではマクロファージ、深部ではoligodendrocyte precursor cell が多く含まれるといった採取部位による含有細胞組成の不均一性を確認した。Mesenchymal-like、Astrocyte-like、Oligodendrocyte precursor cell-like、Neural precursor cell-likeといった、これまでに報告されている膠芽腫細胞の遺伝子発現パターンについても、採取部位による不均一性を確認した。公開データとの統合解析を行い、inter tumoral heterogeneityについての解析、また、isoform解析が可能なsingle cell long read RNA-seqも進めており、スプライシング解析やRNAからの変異解析も行い進展形式を明らかにしていく。
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