研究課題/領域番号 |
22K16667
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
森本 尭之 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (20865563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膠芽腫 / NK細胞 / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / TIGIT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、チェックポイント受容体であるTIGITをノックアウトしたヒトNK細胞を誘導し、各種モデルを用いたGBMに対する抗腫瘍効果の増強を示し、臨床応用に寄与できる詳細な細胞特性を明らかにすることで、NK細胞を用いたGBMに対する新規免疫治療法の確立の土台を形成することである。 2022年度には、TIGIT KO NK細胞を作成すべく、CRISPR/Cas9の配列を決定し、実際にin vitroにてゲノム編集NK細胞を確立する必要があった。IDT社のWebサイトにてsingle-guide RNA(sgRNA)を設計する。TIGIT遺伝子を切断する標的配列を設計し、細胞内の非相同末端結合を利用した修復を誘起する。遺伝子ノックアウト効率については設計したCRISPR配列によって違いが生じることを我々は経験しており、中には遺伝子をノックアウトできない領域も存在する可能性も想定される。このため少なくとも2つ以上の位置でCRISPR配列を設計するものとした。CRISPER配列として、3つを設定することができ、いずれも違ったexonに存在することを確認できた。これらのCRISPRを用いて、ヒト末梢血から誘導したNK細胞に対して電気穿孔法でCRISPR/Cas9を誘導し、TIGITを発現する遺伝子のノックアウトを行い、ゲノム編集後のNK細胞のTIGIT発現やその他のcheck point recepterの発現を確認することが目的です
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度には、TIGIT KO NK細胞を作成すべく、CRISPR/Cas9の配列を決定し、実際にin vitroにてゲノム編集NK細胞を確立する必要があった。IDT社のWebサイトにてsingle-guide RNA(sgRNA)を設計する。TIGIT遺伝子を切断する標的配列を設計し、細胞内の非相同末端結合を利用した修復を誘起する。遺伝子ノックアウト効率については設計したCRISPR配列によって違いが生じることを我々は経験しており、中には遺伝子をノックアウトできない領域も存在する可能性も想定される。このため少なくとも2つ以上の位置でCRISPR配列を設計するものとした。CRISPER配列として、3つを設定することができ、いずれも違ったexonに存在することを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、TIGIT KO NK細胞を作成するべく、複数のCRISPR配列をデザインした。 今後、ヒト健常人血液からT細胞を除去した末梢血単核細胞を分離し、IL-2/IL-18の存在下で拡大培養を行う。培養7日目のNK細胞にCRISPR配列とCas9蛋白をNucleofectorによる電気穿孔法で導入する。遺伝子導入後に、自己血漿、IL-2含有AIM-V培地でさらに7日間培養する。増幅倍率は14日間で50倍以上を目標とする。 次に、TIGIT、その他の細胞表面レセプターの発現を各種抗体とフローサイトメータ (BD社) を用いて解析する。DNA抽出キットを用いてDNAを単離し、polymerase chain reaction (PCR)で標的配列周辺のDNAを増幅する。増幅後のPCR産物を再び変性とアニーリングさせ、T7 Endonuclease I によりミスマッチ配列を切断し、電気泳動を行うことでTGIT遺伝子の破壊効率を確認する。また、RNA抽出キット(QIAgen社)を用いてRNAを単離し、Clariom S (Thermo社)を用いたマイクロアレイ解析を理研ジェネシス社等の外部委託施設に依頼する。その後、Transcriptome Analysis Console (TAC) software (Thermo社)を用いて解析を行う。また、enrichment解析により、NK細胞の機能解析を行う。これらの検証により、TIGIT関連遺伝子と非関連遺伝子の発現変化を詳細に把握でき、ゲノム編集の質を包括的に評価できる。これによりがん化などの潜在リスクも評価できる可能性があり、臨床応用に向けて、その安全性が推定できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも進展があったため、令和4年度に施行予定であったマウス脳腫瘍モデルのマイクロアレイによる遺伝子発現解析を令和3年度中に導入する必要がでてきた。そのことにより、ヒトGBMのマウスxenograft modelを確立し、今回のTIGIT KO NK細胞の抗腫瘍効果を検討する際にも同モデルは有用であると考えているが、マウスxenograft modelに対してNK細胞がどのような分子学的影響を与えているかの評価ができておらず、TIGIT KO NK細胞の抗腫瘍効果を検討する前には必要な実験である。そこで、マウス脳腫瘍モデルから組織を摘出し、RNAを抽出してマイクロアレイ解析を行うことで、NK細胞が脳腫瘍の分子学的特徴にどのように影響を与えるかの評価するために前倒し支払請求することとしたい。
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