研究課題/領域番号 |
22K16689
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 大介 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (30750492)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 悪性グリオーマ / 脳腫瘍 / microRNA / 老化 / 加齢 / 悪性化 |
研究実績の概要 |
1. 高齢悪性グリオーマ患者に発現する特異的遺伝子(mRNA)探索 TCGAデータ解析にて、高齢群の腫瘍内ではNLRP6やPLA2R1など炎症関連遺伝子の発現が上昇し、免疫応答やSASPに関連する経路が亢進していた。一方、SCGN、SLC18A1、SLC18A3などneuron/synapse関連遺伝子の発現やneuron/synapse関連経路が低下しており、特にSCGN発現低下群で有意に生存期間が短縮していた。 2.特異的microRNAに対する標的遺伝子の特定 TCGAデータセット(miRNA)中の悪性グリオーマ409例を高齢群(61歳以上:203例)と非高齢群(60歳以下:206例)に分け、腫瘍内miRNA発現を解析したところ、高齢群で有意に発現異常を示したmiRNAは8個(上昇3個, 低下5個)であった。これらの中で最も生命予後に関連するmiRNAとして、発現上昇を示すmiR-Xと発現低下を示すmiR-Yを同定した。次に、TCGAデータセット(mRNA)の悪性グリオーマ144例を高齢群(61歳以上:65例)と非高齢群(60歳以下:79例)に分けて腫瘍内mRNA発現を解析し、高齢群で有意に発現異常を示したmRNAを44個同定した。TargetScanにて検索し得た標的遺伝子はmiR-Xで4048個、miR-Yで4704個であり、これらを同定した44個と照合した結果、miR-Xに対する標的遺伝子としてSCGN、miR-Yに対する標的遺伝子としてPLA2G3を同定した。 3. 臨床検体(ヒト腫瘍組織)における標的遺伝子の発現 腫瘍組織を用いて免疫染色を行い、高齢群(80歳以上)と非高齢群(60歳未満)で各々6検体を使用してSCGNとPLA2G3の発現を比較した。組織内発現において明確な違いは認めなかったが、高齢群においてSCGNの発現が低く、PLA2G3の発現は高い傾向を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢悪性グリオーマに特異的に発現するmiRNAを2つ同定し、標的遺伝子も特定している。さらに、発現解析も部分的に完了しているが、in vitroおよびin vivo実験による機能解析実験があまり進んでいない。 ただ、関連学会(日本脳腫瘍学会や日本脳神経外科学会)において研究成果は発表できている。
|
今後の研究の推進方策 |
同定した2つのmiRNAと標的遺伝子に関する機能解析実験を進める進める予定である。 また、関連学会(日本脳腫瘍学会、日本脳神経外科学会、北米脳腫瘍学会など)において研究成果を発表し、論文も執筆する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
機能解析実験の進捗が遅れたため、2023年度に購入を予定していた各種消耗品(試薬やキットなど)の購入時期が2024年度に変更となった。これにより、未使用額が発生した。
|