研究実績の概要 |
中枢神経原発悪性リンパ腫(Primary central nervous system lymphoma, PCNSL)は、中枢神経系(脳・脊髄・網膜)に限局した悪性リンパ腫である。これまでの研究からNF-kB経路が腫瘍の発生、増殖に重要であることが報告されているが、その詳細な機序は未だ解明されていない。申請者らは、現在までに世界最多の PCNSL脳腫瘍モデルの樹立に成功しており、中枢神経内への浸潤を経時的に観察することに成功している(Tateishi, Miyake, et al. Cancer Res. 2020)。本研究は、これらのモデルを駆使して、PCNSLの発生機序について分子生物学的機序の解明を図るとともに、腫瘍形成制御につながる創薬化を目指すものである。 当院でCNSLと診断した41例に対し、患者由来細胞株の樹立を行った。この中で31例に全エキソン解析を行った。結果、遺伝子解析において、NF-kB経路関連遺伝子であるMYD88変異は64%、CD79B変異は52%(うち81%がMYD88との共変異)に認められた。変異がない例では、NFKBIZ変異などNF-κB関連遺伝子異常を全例に認めた。この背景に基づき、NF-kB経路を標的をした薬物をin vitroにて検証したところ、NF-kB経路の下流の抑制にて、著名な効果を示した。一方でin vivoではマウスの生存期間の延長を認めず、薬物の脳への到達性の問題や、周囲微小環境による影響が示唆された。そこで使用してる免疫不全マウスで存在しているMicrogliaをノックダウンして、腫瘍形成能を比較したが、大きな変化は認められなかった。
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