研究課題/領域番号 |
22K16699
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
白川 学 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50425112)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / 腸内細菌叢 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、臍帯・羊膜由来間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell: MSC)を用いたくも膜下出血モデルに対する神経機能改善を確認し、そのメカニズムを明らかにすることである。本研究の研究期間においては、羊膜と臍帯由来MSCを用いた急性期治療により 1.神経障害自体の軽減効果 2.脳血管攣縮の軽減効果を検討するとともに、その神経機能改善ならび攣縮軽減メカニズムについて免疫反応を中心に解析する。免疫反応については、今まで血清や脾臓をターゲットに検討していたが、近年、免疫反応と腸内細菌叢(マイクロバイオータ)との関連性が報告されており、それらも含めて解析を行う。そして、ヒト臨床応用に向けて MSCの至適投与量・タイミングの検討を行う。本研究の結果から、現在治療法のない、くも膜下出血後の神経学的後遺症を軽減する新たな治療を提案することができ、患者の予後改善に寄与できると考えられる。この研究成果を基礎資料とし、臍帯・羊膜由来MSC投与によるくも膜下出血後の神経学的後遺症の軽減を目指した治療の将来的な臨床応用へと研究を進めていく予定である。 次年度は、初年度に確立したC57BL/6マウスを用い、神経障害の指標の一つである活性化マイクログリアの脳内集積数を定量的に評価した。また、採取血液を用い、Enzyme-Linked Immunosorbent Assay法で炎症性サイトカインを測定し、くも膜下出血に伴う全身性炎症を評価した。腸内細菌叢(マイクロバイオータ)の解析のため、くも膜下出血群、非くも膜下出血群をそれぞれ抗生物質投与を投与し腸内細菌叢をなくした群と抗生物質未投与の群に分け、2x2の4群で現在次世代シーケンサーを用いた菌由来 の16S リボゾームRNAの解析を行っている。また、細胞投与による効果を判定する行動学的試験の最適化を行っている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度は、神経障害の指標の一つである活性化マイクログリアの脳内集積数の定量的評価の確立、くも膜下出血に伴う全身性炎症の評価の確立、糞便中細菌DNA量測定などの腸内細菌叢(マイクロバイオータ)解析の予備実験を行うことができた。現在、行動試験の最適化を行っており、研究期間で当初の予定した成果を出せる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
臍帯ならび羊膜由来MSCの急性期投与による神経学的後遺症が軽減することを証明するため、SAHモデル作成24時間後に、羊膜ならび臍帯MSCを静脈投与し、4週経過した後に神経行動学的評価により治療効果を判定する予定である。 神経行動学的評価は、受動的回避学習試験や高架式十字迷路試験の多数のタスクを組み合わせて評価を行う予定であるが、脳出血や脳梗塞のように巣症状が出にくいと予想されるため、予備実験として、SAHモデルマウスと正常のマウスでの違いを確認する。差が得られやすい行動試験を重点的に行う。また、その延長上で治療効果の最大化のための至適投与量・投与タイミングの検討を行う。 臍帯・羊膜由来MSC静脈内投与による免疫応答に関して、フローサイトメトリー・免疫染色・ウエスタンブロット・PCRによる脳内・脾臓での免疫学的評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通り使用しているが、繰り越した経費は実験に使用する試薬を購入のため充当する予定である。
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