研究課題/領域番号 |
22K16702
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
新戸部 陽士郎 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (10910482)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 自然回復 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
急性期脊髄損傷における自然回復について以下のように検討し、第52回日本脊椎脊髄病学会で口演発表を行った。 【目的】脊髄損傷の自然回復予測のために評価可能な予後不良因子として50歳以上、上位胸髄の損傷、低アルブミン血症が報告されているが、それらを組み合わせたスコアリングシステムは確立されていない。本研究の目的は年齢、損傷高位、受傷時AIS、血中アルブミン値 (Alb)を用いたスコアリングシステムの有用性について検討することである。 【方法】対象は受傷時AISがA・B・C、経過観察期間が6ヶ月以上で、意識障害・頭部外傷合併例を除外した脊髄損傷61例(平均66.5歳)とした。スコアリングシステムは年齢(0点: 50歳以上、1点: 50歳未満)、損傷高位(0点: T1-9、1点: T1-9以外)、受傷時AIS (0点: A、1点: B、2点: C)、Alb (0点: 3.4mg/dl未満、1点: 3.4mg/dl以上)として評価した。統計学的検討は、従属変数を最終観察時のAIS改善の有無、独立変数を年齢、性別、BMI、損傷高位、受傷時AIS、Albとしてロジスティック回帰分析を用いた。またROC解析でSCINRSの精度を検討した。 【結果】単変量解析で有意な因子は年齢 (OR 0.14)、受傷時AIS (OR 3.22)、Alb (OR 4.18)だった。年齢、性別、BMIに損傷高位、受傷時AIS、Albを強制投入した多変量解析による有意な因子は受傷時AIS (p=0.045、OR 2.32)だった。ROC解析でSCINRSのAUCは0.705、カットオフ値は2点であり、感度は95%、特異度は45%、陽性適中率は78%、陰性適中率は82%だった。 【結論】SCINRS 2点以上で脊髄損傷後の自然回復が予測されることが示唆された。しかし特異度が低く、新たなバイオマーカーの確立が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄損傷の自然回復を予測する新たなスコアリングシステムについて検討し、学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討可能な項目によるスコアリングの有用性が示唆されたが、特異度が低く新たなバイオマーカーの確立を要する現在の脊髄損傷後の自然回復予測の限界が明らかとなった。その限界を改善させるために研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
脊髄損傷患者の搬送が少なく検査費用が予定よりも下回ったため。原因として新型コロナウイルスによる外出自粛で外傷が減少したことが考えられる。新型コロナウイルス沈静化により搬送が増える可能性が考えられる。令和5年度は必要となる物品費または解析費の増大が見込まれる。
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