研究課題/領域番号 |
22K16708
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
遠藤 健太郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, プロジェクト助教 (30844378)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞老化 / 滑膜 / ABT-263 / 変形性膝関節症 / 老化細胞除去薬 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症(OA)に対する治療法の開発は現在社会的に喫緊の課題となっている。申請者らは滑膜間葉系幹細胞(滑膜MSCs)の注射がOA治療効果を有することを実証してきた。一方で、OA患者の滑膜MSCsには老化細胞が多数混入しており、それによりOA治療効果が阻害されるという新たな問題が明らかとなった。したがって本研究では、ABT-263により質の悪い老化細胞のみを除去することで、OA患者由来滑膜MSCsの高品質化を試み、より有効性の高いOA治療の開発を目指す。 2022年度はABT-263によるOA患者由来滑膜MSCsの高品質化を試みた。OA患者5名由来の滑膜MSCsをABT-263で24時間処理し、細胞機能を多角的に評価した。ABT-263処理により、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-gal)陽性細胞の割合とBCL-2の発現が有意に減少し、カスパーゼ3誘導性のアポトーシスが認められた。MSCsのネガティブマーカーであるCD34発現はABT-263処理により有意に低下した。ABT-263処理細胞は、より多くの大きなコロニーを形成し、多分化能(特に軟骨分化と脂肪分化)が向上した。軟骨分化においては、グリコサミノグリカンとII型コラーゲンを大量に生成し、老化マーカーの発現が低かった。 上記の結果から、OA患者由来の滑膜MSCをABT-263で処理することで、老化細胞を選択的に除去し、細胞の機能を向上させることに成功した。これは、ABT-263が細胞ベースのOA治療法の開発に有用であることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りABT-263による滑膜MSCsの高品質化に成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は予定通り、ABT-263によるOA患者由来滑膜MSCsの高品質化によって、細胞の生着やOA治療効果が増強されるかどうかを、ラットOAモデルにて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
想定より実験が順調に進み、条件検討等に必要な試薬・器具類が少なく済んだため。次年度使用額分はin vivoでのより詳細な評価(RNA-seq等)に使用予定である。
|