変形性膝関節症(OA)に対する治療法の開発は現在社会的に喫緊の課題となっている。申請者らは滑膜間葉系幹細胞(滑膜MSCs)の注射がOA治療効果を有することを実証してきた。一方で、OA患者の滑膜MSCsには老化細胞が多数混入しており、それによりOA治療効果が阻害されるという新たな問題が明らかとなった。したがって本研究では、ABT-263により質の悪い老化細胞のみを除去することで、OA患者由来滑膜MSCsの高品質化を試み、より有効性の高いOA治療の開発を目指す。 2022年度はABT-263によるOA患者由来滑膜MSCsの高品質化に成功した。しかし、薬剤処理による細胞への微細なダメージ(一時的な増殖能の低下)が見られ、移植用の細胞数を安定的に確保することが困難であった。そこで、より細胞へのストレスが少ない方法として、細胞サイズと自家蛍光に基づく分取による高品質化について検討した。OA患者由来の滑膜MSCsをセルソーターにて①Large(サイズ:大、自家蛍光:強)、②Medium(サイズ:中、自家蛍光:中)、③Small(サイズ:小、自家蛍光:弱)の3つに分取し、細胞機能を多角的に評価した。結果として、Small、Medium、Largeの順に老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-gal)陽性細胞の割合が減少し、コロニー形成能や軟骨分化能が大きく向上した。 以上の結果から、OA患者由来の滑膜MSCのより細胞に優しいdrug-freeでの高品質化に成功した。現在、本法により高品質化したMSCのOA治療効果について詳細な検討を実施・解析中である。
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