研究課題
易転移性を有する高悪性度の骨肉腫細胞株(143B)から高濃度に分泌されていた13種類のmiRNAsに関して、他院の骨肉腫患者の血清中の含有量と予後との関係を後ろ向き研究として評価を行った。過去の報告(Osteosarcoma-Derived Small Extracellular Vesicles Enhance Tumor Metastasis and Suppress Osteoclastogenesis by miR-146a-5p. Araki Y, et al. Front Oncol. 2021 May 4; 11: 667109.)で、骨肉腫細胞から分泌される、破骨細胞の分化抑制分子として特定したmiR-146a-5pに関しては、骨肉腫の予後マーカーとしての有用性を見出すことができなかった。しかし、血清miR-1260aは含有量が多いほど予後良好という新たな知見が得られ、新規予後マーカーとしての可能性が見いだされた。また、同13種類のmiRNAsに関して、健常者及び他の骨腫瘍患者と比較して、血清中の含有量の違いで骨肉腫の診断が可能かどうか、上記と同様に他院のデータを用いて、その有用性を評価した。miR-146a-5pは健常者よりは有意に含有量が多く含まれていたが、他の骨腫瘍と比較して有意差を認めなかった。しかし、血清miR-1261は良性(骨軟骨腫)や中間悪性群(骨巨細胞腫)の骨腫瘍と比較して、骨肉腫に有意に含有量が多いという新たな知見が得られた。さらに143B細胞株への遺伝子導入実験において、miR-1261の産生を抑制することで、がん抑制遺伝子のひとつであるSETD2分子が有意に増加することが、qRT-PCRによりmRNAレベルでの有意差が確認でき、骨肉腫の新規治療標的となりうる可能性が新たに示唆された。
2: おおむね順調に進展している
患者血清中のmiRNAデータを評価する後ろ向き研究は終了し、新たな知見を得ることができており、論文化して英文雑誌・和文雑誌に掲載いただいた。
がん抑制遺伝子のひとつであるSETD2を治療標的とした、骨肉腫の新たな治療戦略を見出す基礎研究・臨床研究を進めていきたいと考えている。
本年度までの研究結果を論文化することを優先していたため、国内外を問わず、学術集会において発表機会がなく、当初予定していた旅費の経費がかかっていないことが要因と考えられる。次年度は本研究成果を学術集会において発表する機会をもつことも検討していきたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Precision Medicine
巻: 7(4) ページ: 71-76
Oncology Letters
巻: 25(6) ページ: 222
10.3892/ol.2023.13808.