研究課題
椎間板は椎骨をつなぐ軟骨組織で、荷重に対してクッションの役割をしており、加齢や外傷、ストレスなどにより椎間板が変性すると慢性化する腰痛や日常生活動作の障害をひきおこす。社会が高齢化する中で、椎間板変性に伴う腰痛患者は増加しており効果的な治療の開発が求められている。椎間板は人体最大の無血管組織であり、一度損傷すると組織の自然修復が難しいため、外部から組織再生を促すような薬剤を投与することが必要となる。本研究では、われわれが開発したmRNA医薬を応用して、椎間板組織の再生を促進させる転写因子を投与することで、実用的な椎間板治療システム構築を目指す。具体的には、実臨床に即したラット椎間板変性モデルを作成し、髄核の再生が期待される軟骨誘導性転写因子RUNX1、Cbfb1、Sox9、Wwp2を局所投与することによる椎間板変性の抑制効果を詳細に解析していく。そのために当該年度においては、ラット椎間板変性モデルの確立を目標としていた。ラットに対して、後方からのアプローチにより椎弓後面を露出、第3.4.5腰椎の棘突起に18G針により孔作成し、1-0絹糸を通し締結する。さらに歯科用接着材料であるスーパーボンド(サンメディカル社)を棘突起間、椎弓間に塗布することにより固定モデルを作成し、それぞれ、術後4W、8W、12Wにて単純X線、MRI、組織学的検討(HE染色、SO染色、各免疫染色)、椎間板組織におけるIL-6、Col2、Agg、MMP3、MMP13等を定量し、炎症、変性進行の評価を行い、経時的に椎間板変性が進行していることを確認し、昨年は不十分であったラット椎間板変性モデルを作成することができた。さらに昨年度末には、mRNAを介して軟骨誘導性転写因子の椎間板への投与も開始しつつある。
3: やや遅れている
上記に記載した通り、初年度のモデルの作成については完成し、次年度(昨年度)の目標であった、mRNAを介して軟骨誘導性転写因子の椎間板への投与を開始しているものの解析に至っていないためやや遅れているとした。
今後は確立したラット椎間板変性モデルに対して、・mRNAを介して軟骨誘導性転写因子の椎間板への投与・椎間板変性の抑制効果の評価を進めていく予定である。
2022年度の未使用分が大きく残っているためであるが、今年度研究が進むことが期待でき、学会発表や物品費、論文作成に伴う費用により使用される見込みである。
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Spine (Phila Pa 1976)
巻: 48 ページ: 1259-1265
10.1097/BRS.0000000000004762