研究課題/領域番号 |
22K16747
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
高田 尚輝 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 登録医 (10908510)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨巨細胞腫 / 間葉系細胞 / 破骨細胞様多核巨細胞 / 腫瘍関連マクロファージ / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は局所破壊性を有し、高い再発率と稀に肺転移や悪性転化を示す良悪性中間型の骨腫瘍である骨巨細胞腫の腫瘍周囲環境を検討し、新規薬物療法の可能性を探索することである。そこで、まず骨巨細胞腫の病理を確認するため、組織切片の染色を行った。骨巨細胞腫は破骨細胞様の多核巨細胞と腫瘍細胞と思われる紡錘形の細胞で構成された。更に免疫染色を行って腫瘍微小環境としてのマクロファージ等を探索した。また骨巨細胞腫手術検体より、コラゲナーゼとデオキシリボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼを用いて細胞解離を行って、腫瘍細胞を単離し、細胞培養を試みた。腫瘍細胞は単離可能で、十分な増殖能があることを確認した。更に腫瘍細胞の特徴を検討するために。RNA抽出を行い、幹細胞マーカーやがん抑制遺伝子などの発現を質的リアルタイムPCR法で検討した。幹細胞の特徴としてはがん抑制遺伝子などの目立った増幅は認められなかった。 治療薬としての候補としてmTOR阻害薬を投与し、細胞増殖をスクラッチアッセイやMTTアッセイなどで確認したが、有意な幹細胞の増殖抑制効果は得られなかった。今年度の実験において検体数が少ないことは課題であるものの組織評価、in vitroでの細胞単離・培養、また阻害薬等投与による腫瘍細胞などの抑制効果などを確認する実験手法は確立されたと考えられ、今後はより詳細な構成細胞の性質・腫瘍美食環境について検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨巨細胞腫の細胞株はまだ種類が少なく、確立されておらず、また未治療の骨巨細胞腫の検体数も少ない為、予備実験が進まなかったことが原因として挙げられる。 また腫瘍微小環境や腫瘍細胞・破骨細胞様多核巨細胞・マクロファージの分泌因子を検討するために網羅的解析を行いたいが、行えていないことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
骨巨細胞腫が稀であることが問題であるため, 検体数確保と予備実験の推進のため, 他の多核巨細胞形成性の骨軟部腫瘍においても検討していく。また現在ある骨巨細胞腫の細胞株を入手してそちらでも検討していく。検討内容としては腫瘍微小環境を詳細に検討するため、腫瘍細胞・破骨細胞様多核巨細胞・マクロファージの性質をqPCR等を用いて確認し、ELIZAなどを用いてそれらからの分泌因子を確認する。可能であればこれらは網羅的解析を行う。目立った分泌因子に対してはin vitroで阻害薬を投与して、新規治療薬の可能性を検討する。また候補薬が選定された場合にはマウス投与実験に移るため、骨巨細胞腫患者腫瘍移植マウスモデルを確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は骨巨細胞腫の構成細胞である腫瘍細胞を対象とした新規の腫瘍増殖抑制薬を探索する研究であるが、増殖抑制薬の候補を同定できなかったために、その試薬代を次年度を繰り越すこととなった。次年度は次年度の予算と合わせて、腫瘍抑制候補薬をin vitroまたは in vivo 腫瘍埋植モデルマウスで投与実験を行っていく予定である。
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