研究実績の概要 |
【目的】近年、人工肩関節置換術後の骨吸収の報告が散見される。骨吸収はストレスシールディングが原因の一つと考えられている。2016年より本邦で使用可能となったショートステムではスタンダードステムより骨吸収が少ないと報告されており、我々も、過去にショートステムで外側骨幹部の骨吸収が減らせる可能性を報告した。本研究の目的は、過去に臨床例で検討したものと同じスタンダードステム(ST)とショートステム(SH)挿入後の上腕骨への応力を有限要素法を用いて比較することにより、過去の臨床例での骨吸収の結果を生体力学的に裏付けることである。 【方法】対象は5肩で、女性2肩、男性3肩、平均年齢は71.6歳であり、腱板断裂後関節症の術前に撮影したCTを用いた。CTに基づいた有限要素モデルをMechanical Finder(計算力学研究センター)を用いて作成し、同じ機種Comprehensive Shoulder System [Zimmerbiomet]のSTとSHを挿入し、荷重は肩外転70度でかかる500Nとし、拘束は上腕骨末梢で行った。井上らの分類に基づいてステム周囲の各部位の上腕骨に生じる応力の測定を行った。(Zone1:大結節、Zone2:外側骨幹部、Zone3:外側三角筋結節以遠、Zone5: 内側三角筋結節以遠、Zone6:内側骨幹部、Zone7:内側頚部) 【結果】上腕骨の応力は、Zone1はST:0.82MPa、SH:1.80MPa。Zone2はST:6.75MPa、SH:13.91MPa。Zone3はST:18.47MPa、SH:23.54MPa。Zone5はST:27.65MPa、SH:33.54MPa。Zon6はST:8.93MPa、SH:15.64MPa。Zone7はST:1.25MPa、SH:1.83MPaであり、Zone2, 6でSHがSTよりも応力が大きかった。
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