研究実績の概要 |
外反母趾治療で良好な矯正位を獲得するためには第1中足骨頭の回旋の矯正が必要とされ,種子骨との位置関係の是正にも関係が深い.しかし,回旋の発生部位,程度,重症度との関連などは未だ明らかでない.今回の研究の目的は,回旋の1つの要因である中足骨自体の捻れを3次元的に検討することである. 対象は足部疾患の既往がない女性で,健常足は15名15足,外反母趾足は11名11足であった.年齢は平均55歳と60歳,外反母趾角(HVA)は平均14°と42°であった.CT画像から3次元化した中足骨の近位部と遠位部の35%を取り出し,基準足(健常足から1足を無作為に抽出)に重ね合わせて比較した.遠位が近位に対して骨軸周りに回転した角度を中足骨の捻れ角と定義した.外反母趾足について,中足骨の捻れ角と外反母趾の重症度(HVAと第1・2中足骨間角(M1-M2))の相関を検討した. 外反母趾足では,健常足と比較して第1中足骨は平均16°回内方向に有意に捻れていた(p<0.01).また第5中足骨も外反母趾足では,15°回内方向に有意に捻れていた(p< 0.01).しかし,いずれもHVAとM1-M2との相関関係はなかった(p>0.05).第2,3,4中足骨では,両群間に捻れに関しての有意差はなく,相関関係もなかった(p>0.05). 解剖学的特徴点を指定せずに3次元物体の位置合わせを可能にするICP algorithmを用いることで,精密かつ定量的な計測が可能であった.外反母趾足では第1,5中足骨には回内変形が存在し,第1中足骨では,従来の報告(8~13°)よりもやや大きかった.手術では関節面での回旋のみならず,骨自体の捻れも考慮した回旋矯正をする必要性が示唆された.また,外反母趾が重症化しても捻れの増加はなく,これは固有の骨形態であり,むしろ発症に関わる要因であることが示唆された.
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