研究実績の概要 |
外傷後の広範囲骨欠損は治療に難渋する。治療の長期化に伴う患者の社会復帰の遅延は、患者に肉体的・精神的苦痛を与えるとともに医療費の増加と社会経済的損失に直結する。申請者は、早期治療、社会復帰を実現可能な骨欠損治療法を開発すべくコラゲナーゼ由来のコラーゲン結合ドメイン(CBD)と細菌由来の血管新生促進因子(BafA)のコンジュゲートを作製し、in vitroにおける活性評価とマウス骨折モデルに対する作用を検討した。BafA遺伝子をコドン最適化して合成し、pET28aに挿入し、大腸菌BL21(DE3)を用いてBafAを生産し、アフィニティークロマトとイオン交換クロマトにより高度精製した。BafA遺伝子の3’末に既にコドン最適化したアンカー・モジュールの構造遺伝子を連結して、コラーゲン結合型 BafA CB-BafA)を生産した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にCB-BafAを添加し、血管内皮細胞に対する増殖活性を検討した(MTTアッセイ)。その結果、BafA, CB-BafAは血管内皮細胞の増殖を促進することを示した。次に、マウス大腿骨モデル(骨切りモデル)を作製し、in vivoにおける骨癒合促進効果を検討した。コラーゲンパウダーと BafA, CB-BafAを混合後、骨切り部に投与した。投与4週後、マイクロCTを用いて仮骨量、骨塩量、骨癒合率を評価した。コラーゲンパウダーのみ投与した群をコントロールとした。BafA, CB-BafA群ともにコントロール群との間に仮骨量、骨塩量、骨癒合率に差を認めなかった。成長因子部やコラーゲンアンカー部を調整する必要がある。
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