研究課題/領域番号 |
22K16781
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
下出 孟史 近畿大学, 医学部, 講師 (30716486)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | PTHrP / PTH / 骨格形成 / 手指骨形成 / 骨芽細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、副甲状腺ホルモン(PTH)と構造が類似し、PTHと共通の受容体(PTH/PTHrP受容体:PTHR1)を介して作用する副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の骨格、手指形成における役割を検討している。 PTHrPとPTHR1、またその双方を、幼若骨芽細胞、成熟骨芽細胞、間葉系幹細胞特異的にノックアウトしたマウスを作製し、骨形成系細胞の異なる分化段階におけるPTHrPの役割を検討している。また、リガンド、受容体、双方をノックアウトした3種のマウスを比較することにより、リガンドとして作用するPTHrPのN末端部の機能だけでなく、受容体を介さない作用を持つ可能性のある、PTHrPの中間領域+C末端の機能についても検討している。 2023年度は、『間葉系幹細胞特異的』PTHrP欠損マウス(PthrpMSC-/-)、PTHR1欠損マウス(Pthr1MSC-/-)、PTHrP+PTHR1欠損マウス(PthrpMSC-/-;Pthr1MSC-/-)の3種を作製し、野生型マウスの表現型との比較を行った。3種類の間葉系幹細胞特異的遺伝子欠損マウスは、いずれも四肢の著しい短縮を認め、PTHrPおよびPTHR1が長管骨の形成において重要であることが示唆された。これらのうち、PthrpMSC-/-;Pthr1MSC-/-は、生後間もなく死亡することが分かった。また、PthrpMSC-/-とPthr1MSC-/-では足趾骨の表現型に差異を認めた。現在四肢短縮と足趾形成異常のメカニズムの解析を行っている。また、リガンドを遺伝子欠損させた場合と受容体を遺伝子欠損させた場合とで表現型が異なることが確認できた。これら2種類の遺伝子欠損マウスを比較することにより、PTHrPのN末端部の機能だけでなく、受容体を介さない作用を持つ可能性のある、PTHrPの中間領域+C末端の機能についても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は前所属先において間葉系幹細胞特異的にPTHrPを欠損させたマウスを作製し、手指形成における興味深い表現型を確認している。本研究では、前所属先から同マウスの譲渡を受け、研究を行う計画であったが、COVID-19パンデミックの影響等によりマウスの移入計画が遅れ、2022年度末に凍結保存精子の搬入が完了し、2023年度に人工体外受精による生体作製を開始した。2023年度末にようやく目的とする遺伝子型のマウスの作製が完了し、現在表現型の解析、メカニズムの解析に着手したところである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、得られた遺伝子欠損マウスの表現型について、形態学的、組織学的解析を行う予定である。また、これらのマウスの手指において網羅的遺伝子解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度時点で、COVID-19の蔓延により実験を開始するための必須条件であるマウス凍結精子の輸入が遅延した。これにより、実験計画に遅れが生じている。2023年度は実験が進んでいるが、前年度の影響があり、次年度使用額が生じてしまった。発生した次年度使用額については、実験計画に基づき、2024年度に使用予定である。
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