研究課題/領域番号 |
22K16785
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 央 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (20828305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腫瘍血流 / 腫瘍増殖能 / 腫瘍血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では,まず腫瘍血流の違いが小径腎細胞癌の進展・悪性化の促進に影響しているのか実際の臨床症例から解析を試みた.腎癌組織内のリアルタイムの血流を解析する方法として,造影超音波による解析を行った.腫瘍内における造影剤の流入・流出状況を解析し,腫瘍内の血液の灌流状況をTime intensity curve解析という手法を用いて,把握することを試みた.関心領域を設定した部位での造影剤の染色輝度の時間軸による変化を測定し,正常腎組織の部位と比較することで,血流の増強やうっ滞の状況を推定した.約50例の解析を行ったところ,腫瘍増殖能が高いとされる、腎中枢部に近い腫瘍の方が外方に発生した腫瘍と比較して、血流の増強とうっ滞の傾向が強いことが判明した。このことから、小径腎細胞癌の中でアグレッシブに増大・進展するものとしないものとの差を生み出す要因として,腫瘍への血流がその違いを生み出す一つの要因だと推定された. 腫瘍血流が腫瘍増殖の違いをもたらすことが示唆されたが、そのメカニズムとして代謝が影響していることを想定している.腫瘍血管内皮細胞の代謝異常が腫瘍の悪性化に影響することは過去に証明されており,またTCGAのデータベースからも,腎中枢部に近い腫瘍と,外方にある腫瘍とでは代謝に関わる分子発現の違いがあることが証明された.今後メタボローム解析を中心に腫瘍血流が腫瘍増殖,進展に影響するメカニズムを解明していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト臨床検体を用いるうえで、倫理委員会の承認を得るに時間を要した。腎癌組織を用いた、免疫組織学的解析・メタボローム解析はこれからを予定している。その解析結果をもとに、ターゲットとなる分子を同定しin vitro, in vivo実験による検証を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
北海道大学病院腎泌尿器外科において,腎細胞癌にたいし手術で切除された検体を用いて,細胞分裂マーカーの免疫染色による組織学的解析を行う.造影超音波検査の解析結果と比較して,血流が豊富な腫瘍とそうではない腫瘍とで細胞分裂マーカーの発現状態に差があるか解析する.さらに,細胞分裂マーカーの発現に差がある組織を用いて,メタボローム解析を行い細胞分裂マーカーの発現が亢進している腫瘍組織において上昇している代謝経路を同定する.つづいて、ヒト腎細胞癌由来腫瘍血管内皮細胞を用いて下記のin vitro実験を行う.上記の結果で得られた腫瘍増殖が亢進している環境を再現した状況で腫瘍血管内皮細胞を培養する.培養状況による腫瘍血管内皮細胞の遺伝子発現や分泌因子の変化を解析し,癌細胞の増殖に関わる分子を同定する.さらに腎細胞癌同所移植マウスモデルをもちいて,腫瘍血管内皮特異的な候補分子のノックアウトにより腫瘍増殖が抑制されるか検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト腎癌組織検体を用いた免疫組織学的解析の開始がおくれたため、次年度にも組織学的解析を引き続き行う。また、メタボローム解析も次年度に行うこととなり、次年度使用額が生じた。
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