研究課題/領域番号 |
22K16788
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 佳之 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20529135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ハンナ型間質性膀胱炎 / モデル動物 / IL17A |
研究実績の概要 |
前年度までに研究のプラットフォームとなる養子移植免疫によるハンナ型間質性膀胱炎モデル動物マウスのvalidationを行い、本モデルが高い再現性を有することを確認した。その後、治療標的分子としてIL-17Aに注目して次年度以降の実験計画を立てる方針とした。以下、各々概要を示す。①HIC動物モデルの確立:まず、遺伝子組み換えのない通常のマウス(C57BL/6マウス、雌性、6-8週齢)へOVAをcomplete Freund’s adjuvantとともに皮下投与する。14日後に同マウスより脾臓を摘出しOVA特異的リンパ球を抽出する。得られたリンパ球を膀胱尿路上皮にOVAを発現させた遺伝子改変マウス(URO-OVAマウス)へ静脈内投与し、養子移植免疫を施す。移植後、7,14,21,28日の時点における排尿行動(代謝ケージを用いた昼間・夜間排尿回数及び1回排尿量の測定)、骨盤痛(von-Freyテスト)の評価、膀胱組織の病理学的評価及び炎症性サイトカイン(IL-17A、IFN-γ、TNF-α、Substance P)の発現解析を行ったところ、28日間にわたって排尿回数の増加、1回排尿量の減少、疼痛行動の悪化、膀胱組織の炎症性変化・リンパ球浸潤や炎症性サイトカインの遺伝子発現上昇が確認され、本研究の主要目的のひとつである確実な再現が達成できた。② IL-17Aをターゲットとしたpreclinical study:ターゲット分子としてIFNg、IL17Aを同定した。免疫抑制の観点から治療標はIL17Aと定め、上記動物モデルへ抗IL-17A分標的薬を膀胱内注入しその薬効を機能的(排尿回数、骨盤痛)/組織学的に検証することを今後引き続き行う。すでに市販されているIL17A抗体の膀胱内注入による治療効果を確認することが出来れば、本疾患への実用化に向け、臨床開発準備に移行できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はこれまでの研究結果からIFNGに着目して研究計画を立てていたが、本研究課題においてpathogenicな炎症性サイトカインであるIL17Aの発現上昇をモデルマウスで同定することが出来たため、治療標的をIL17Aに変更した。膀胱内注入療法とはいえ、IFNGは免疫反応の根幹をなす分子でありそのブロッキングによる免疫制御が大きく懸念されたためである。幸い、IL17A抗体はすでに他の自己免疫疾患で治療薬として開発、使用されておりその安全性が確認されているため、ハンナ型間質性膀胱炎でも有用性が期待されればDrug repositioningによる早期臨床応用も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当研究チームで開発したハンナ型間質性膀胱炎モデル動物を用いて抗IL-17A分標的薬の膀胱内注入療法の薬効を検証する。具体的には機能的(排尿回数、骨盤痛)/組織学的な検証を行う。研究代表者は今年度より所属施設が異動になり、前任地よりさらに充実した実験設備(代謝ケージ、オルガンバスなど)で排尿機能の解析が可能な環境となった。アイオワ大学泌尿器科とはURO-OVAマウスの移譲計画を進めている。本年度IL17A抗体の膀胱内注入による治療効果をハンナ型間質性膀胱炎モデル動物マウスにおいて確認することが出来れば、本疾患への実用化に向け、臨床開発準備(POC獲得など)に移行できるものと見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費の適正な使用を心掛けた結果、年度末に僅かな余剰金が発生したが、これは今年度に計画している遺伝子改変マウスの米国からの移譲費用に充てる予定としています。
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