転移性膀胱がんに対する新たながん免疫療法の確立を目指し、本研究では CD47-SIRPα結合を阻害する抗SIRPαモノクローナル抗体が、抗PD-L1抗体によるがん細胞の排除に促進的に作用するか、単独投与に比べてより強力な腫瘍排除を示すかについて解析し、がん治療薬としての有効性評価を行った。 in vitroでのマクロファージ(Mφ)を用いた膀胱がん細胞の貪食実験では、抗PD-L1抗体、抗SIRPα抗体単独投与群では有意な貪食率の増強効果は認められなかったのに比して、抗PD-L1、抗SIPRα抗体併用群においては、Mφによるがん細胞の貪食活性が有意に上がっていた。この結果は、マウス骨髄由来Mφ vsマウス膀胱がん細胞でも、ヒト臍帯血由来Mφ vsヒト膀胱がん細胞でも確認できた。さらに、膀胱がん細胞を皮下移植した腫瘍モデルマウスを作成し、これらのモデルマウスに抗体治療を施すことで、in vivoでの抗体治療の抗腫瘍効果について評価を行った結果、単剤治療に比して2剤併用でより強い腫瘍抑制効果を認めた。この結果は、免疫不全model BALB/c ヌードマウスを用いた腫瘍モデルマウスでも同様に認められたことから、2剤併用療法の抗腫瘍効果には、T 細胞の関与を除いた自然免疫系(主にMφ)に寄与する効果であると考えられた。また、実際Mφを枯渇させたモデルマウスを作成し抗体治療を行うと、2剤併用による抗腫瘍効果が打ち消される結果となった。 次に腫瘍内浸潤免疫細胞についてフローサイトメーターを用いて解析した結果、2剤抗体併用療法群において、CD8陽性T細胞の比率が上がっていることも確認できた。 最後にNOGマウスを用い、ヒト膀胱癌由来細胞でも同様にin vivoでの抗体薬併用の効果評価を試みたが、安定した腫瘍定着のモデルマウス作成が困難であり、こちらの評価については見送る形となった。
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