研究課題
当該年度は、腎細胞癌に加えて、主要な泌尿器科悪性腫瘍である尿路上皮癌についても腫瘍免疫微小環境の評価・解析を行った。先行研究で申請者はLAG3, TIM3, TIGITが次世代免疫チェックポイント分子として相互排他的に発現することを見出した。本研究では、その背景にある分子生物学的機構の解明を試みている。しかし、最近の知見の集積により、T細胞を主体とした獲得免疫へのアプローチ以外の腫瘍免疫微小環境へのアプローチが注目を集めている。免疫チェックポイント分子は主にT細胞性免疫の再活性化を介して抗腫瘍効果を発揮する。人体の中の免疫応答はマクロファージを主体とする自然免疫や、抗体産生を介するB細胞免疫がある。本年度は、腎細胞癌における、これらの免疫環境について評価を行った。まず、マクロファージを主体とする免疫評価を行い、マクロファージにおける免疫抑制シグナルであるCD163, マクロファージの貪食を活性化するcalreticulinの発現が腎細胞癌の予後とどのように関連するか解析を行った。その結果high CD163 / low calreticulinの群が最も予後不良であることを見出し、自然免疫に基づく腎細胞がんの新たなリスク分類(Innate immune risk score, IIR)を構築した。更に転移巣がIIRでどのように分類されるかを評価したところ、転移巣ではIIRが高い傾向を認め、特に肺転移巣ではリスクが高いことを見出した。IIRごとの分子生物学的特徴を遺伝子解析を加えて解析を行ったところIIR highではTP53/ cell cycle系の変異が多いことを見出した。この結果を論文発表した。Cancer Immunol Immunotherpy doi: 10.1007/s00262-023-03369-8.
2: おおむね順調に進展している
本研究は腎細胞がんの腫瘍免疫微小環境の全体像を把握することを目的としている。LAG-3, TIM-3, TIGITの発現背景を探る研究自体は進行途中である。現在世界的に注目されているT細胞以外の免疫に着目した解析が順調に進んでいる。
今後、B細胞関連の免疫環境についても解析を進める。また。LAG-3, TIM-3, TIGITの発現の背景にある分子生物学的メカニズムの解明についても並行して研究を行っていく予定である。そのためのfresh検体の集積は進んでいる。
本年度はNGSで解析するための新鮮検体の集積と、免疫組織化学染色によるNGSを実装する検体の選別を主に行っていた。来年度にNGS解析を行うため、次年度使用額に繰り越している
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
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10.1007/s00262-023-03369-8
British Journal of Cancer
10.1038/s41416-022-01895-3
J Immunother Cancer
10.1136/jitc-2021-003883
Laboratory Investigation
10.1016/j.labinv.2022.100040