研究課題
腎盂尿管癌における術後膀胱内再発は一定頻度発生し、まれに筋層浸潤(Muscle-invasive bladder cancer: MIBC)癌へと進展する。一方、上部尿路原発の再発性膀胱癌における分子生物学特徴の変遷を経時的に追跡した検討は少なく、その解明は喫緊の課題であった。そこで本研究は、原発巣である腎盂尿管癌、および膀胱内再発後膀胱癌の異所性、異時性再発における分子生物学的特徴を明らかにすることを目的とした。当院で2000年から2017年に腎尿管全摘除術が行われた腎盂尿管癌患者214例を対象とし、内術後膀胱内再発例92例を追跡し、筋層浸潤癌進展例と非進展例に分類し、その臨床病理学的特徴を確認した。免疫組織マーカーとしてCK20、CK5/6、FGFR3、そしてp53蛋白を用いて免疫組織科学染色を行い、臨床病理学的因子と合わせて解析を行った。全症例214例中、CK5/6は52例(24.3%)、CK20は66例(30.8%)、FGFR3は115例(53.7%)、そしてp53蛋白は72例(33.6%)にそれぞれ発現を認め、CK20陽性(p=0.042)、FGFR3陽性(p=0.021)が術後膀胱内再発における独立した予測因子であった。一方、膀胱内再発した92例のTUR検体では、FGFR3蛋白陽性例が56/92例(60.9%)と他免疫マーカーと比較し、高い傾向にあった。膀胱内再発症例をMIBC進展群、非進展群で比較するとp53変異蛋白がMIBC進展群で有意に高い結果であった(p<0.001)。以上の結果から、腎盂尿管癌はCK20陽性、FGFR3陽性に代表されるluminal-papillary typeにおいて膀胱内再発を認める傾向があり、その分子生物学的特徴は再発後膀胱癌検体に継承される一方で、p53変異蛋白発現のadd onにより筋層進展することが見いだされた。
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