ヒト腎癌細胞株にmTOR阻害剤ラパマイシンを添加したところ、βアラニン値の変動は細胞間で様々であったが、イノシトールはすべての細胞株で上昇した。そこでβアラニンとエベロリムスの併用効果を調べるため、ヒト腎癌細胞株A498、786Oにβアラニンとエベロリムスを添加した。βアラニン単剤では細胞活性に変化を認めず、ラパマイシン単剤では若干の細胞増殖抑制効果を示したが、併用によりラパマイシン単剤よりも強い細胞活性抑制を示した。 さらにin vivoでの効果をみるため、ヌードマウスにA498株を皮下移植し、βアラニン、ラパマイシンの併用治療効果を見たところ、in vitroの結果と同様、併用で強い腫瘍増殖抑制効果を認めた。 現在、免疫系への影響を検討するためにマウス腎癌細胞RENCAの遺伝子編集を行っている。RENCAはマウス由来淡明細胞型腎癌とされているが、ヒト淡明細胞型腎癌で共通してみられるVHL遺伝子不活化がない。そこで、CRISPR/CAS9技術を用いてVHL不活化RENCA細胞を作成している。現在のところ、片側のアレル変異は誘導できているが、両アレル変異を誘導することができておらず、片側アレル変異をきたしているRENCA細胞を用いてさらにCRISPR/CAS9による遺伝子編集を加え、両アレルの変異誘導を試みている。 また、ラパマイシンとβアラニンの併用効果の確認はできたが、なぜ併用効果がみられたのか、分子細胞学的検討が行えておらず、シグナル伝達を中心に検討している。
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