研究課題/領域番号 |
22K16815
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
若井 健 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (80842898)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シスチン結石 / 補体レクチン経路 / 走査電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
尿路結石形成におけるレクチン経路の役割を明らかにすることを目的に2022、2023年度は下記の研究を行った。 ①一般結石患者検体を用いた遺伝子解析:千葉県済生会習志野病院において収集された一般結石患者49検体と千葉大学病院で得られたシスチン尿症患者49検体の遺伝子を用いて、次世代シークエンス解析を行った。細菌感染制御に関わる補体関連遺伝子を網羅的に解析したところ、シスチン尿症患者群において優位に複数のレクチン遺伝子における変異の集積を認めた。このことからシスチン尿症患者においてはレクチン補体経路が正常に機能しないことでマクロファージによる細菌貪食が進まず、シスチン結石増大の一因となっていることが示唆された。 ②走査電子顕微鏡(SEM)を用いた結石の観察:シスチン尿症患者の尿沈渣検体を対象に、SEMを用いて結石の微細構造の超微学的形態観察を行った。標本のコーティングはオスミウムを用いたplasma chemical vapor deposition(pCVD)法で行い、膜厚は2.5nmとし、加速電圧10kvで観察した。その結果、シスチン結石は微小な板状結晶が寄り集まった構造となっていることが初めて確認された。このことから板状結晶ひとつひとつが増大するのではなく寄り集まっていくために結石の増大スピードが大きい可能性と、各結晶間の間隙が細菌感染の足場となって結石増大を促進している可能性が考えられた。上記手法を応用し一般結石の観察も行い、シスチン結石との超微学的形態の違いを解析した。 ③日本泌尿器科学会、国際学会での学術発表:上記の遺伝子異常を踏まえたシスチン結石の増大メカニズムについて研究考察を行い、日本およびヨーロッパの泌尿器科学会にて学術発表および意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りに解析を進めることができている。 結石増大の原因菌を同定する重金属染色を検討していたが、結石表面の細菌を染色するために適切な抗体が見つからず施行できていない。 現在はシュウ酸Ca結石の解析を行い、シスチン結石との比較検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後SEMを用いた特性X線分析によるシスチン結石の元素マッピングを行い、微小な板状結晶の構成元素を確認する予定である。重金属抗体染色法にてシスチン結石表面の細菌と補体の染色を行うことで結石増大の原因菌やメカニズムを解明するとともに、シュウ酸Ca結石との比較検討を行っていく。
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