研究課題/領域番号 |
22K16817
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北 悠希 京都大学, 医学研究科, 助教 (90647455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / 腫瘍微小環境 / 癌関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膀胱癌の化学療法抵抗性に影響を与える腫瘍微小環境、特に癌関連線維芽細胞(CAF)の機能の解明である。 今年度は、2つのマウス膀胱癌モデル(①UPPL; Upk3a-CreERT2; Trp53 flox/flox; Pten flox/flox、②BBN化学発癌モデル)由来の13種の新規膀胱癌細胞株を用い、野生型B6マウスに皮下移植を行うパイロット実験を行った。結果、正常免疫を有する野生型B6マウスに高率に皮下移植可能で、投薬実験の施行が可能と考えられる6細胞株を同定した。 HE染色では、これらの膀胱癌細胞株は、同じモデル由来であっても全く異なる病理像を呈することが分かった。免疫染色では、BBN化学発癌モデル由来の細胞株から形成された皮下腫瘍では、腫瘍細胞周囲にαSMAやVimentin陽性の間葉系細胞、CD8陽性T細胞が豊富であることが見出された。すなわち、これら細胞株の同系皮下移植腫瘍間では、異なる腫瘍微小環境を呈するものと考えられた。 次に、これら細胞株の同系皮下移植腫瘍間の腫瘍微小環境違いが化学療法感受性に与える影響を検証するために、in vitroにおけるシスプラチンの感受性と同系皮下移植腫瘍でのシスプラチンの反応性を定量化することとした。まず、in vitroでは、これら細胞株間で、シスプラチンのIC50は同等であり、同様にシスプラチンの感受性を有することが分かった。同系皮下移植腫瘍においては、vehicle群と比較したシスプラチン群の増殖抑制効果がそれぞれの細胞株間で異なることが予想されるが、現在1種類の細胞株の投薬実験が終了した段階で、今後その他5種類の細胞株を用いて投薬実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に投薬実験を全て終了し、来年度初めから遺伝学的解析を行うことを予定していたが、野生型B6マウスに高率に生着する細胞株の同定に長時間を要し、若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り投薬実験を進め、in vivoでのシスプラチン感受性の細胞株間での違いを明らかにする。その後、各同系皮下移植腫瘍から、フローサイトメトリーを用いてCAFを分離し、single cell RNAseqを行い、CAFの分子サブタイプの同定を行う予定である。特にin vivoでシスプラチン抵抗性の細胞株すなわち腫瘍微小環境の影響が大きいと考えられる細胞株と、逆にin vivoでもシスプラチン感受性の高い細胞株との間で、CAFの分子サブタイプの分布の違いがあるかどうかを検証する。さらにサイトカインアレーを行い、化学療法抵抗性を誘導するCAFの機能解析や、そのような微小環境を誘導しているサイトカイン・ケモカインの探索を行う予定である。
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