研究課題/領域番号 |
22K16818
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梁 英敏 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20884050)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イミプラミンブルー / アポトーシス / 上皮間葉移行 / 膀胱癌 / 前立腺癌 / 腎細胞癌 |
研究実績の概要 |
泌尿器科腫瘍に対し強力な NADPH オキシダーゼ阻害剤である IB を使用して、その抗腫瘍効果を評価しました。 前年度は ヒト膀胱癌細胞株 KK-47 (非浸潤細胞)、T24 および 5637 (浸潤細胞) を実験に使用し遊走と浸潤を抑制する効果が確認できました。 続いて前立腺がんの新しい治療法を開発するために、我々は NADPH オキシダーゼ阻害剤ジベンゾリウム (DIB) の病巣内投与の有効性を評価しました。 ホルモン非依存性 PCの十分に確立されたトランスジェニック腺癌マウス前立腺 (TRAMP-C2) モデルを使用しました。 MTS アッセイ、アポトーシス アッセイ、創傷治癒アッセイ、トランスウェル浸潤アッセイ、RT-qPCR、およびウェスタン ブロッティングを in vitro で実施し、TRAMP-C2 腫瘍を有するマウスにDIB を腫瘍内投与しました。 腫瘍のサイズと重量を経時的に観察しました。 腫瘍を除去した後、H-E 染色および免疫組織化学 (IHC) 染色を実施しました。 DIB による処理は、PCA 細胞の細胞増殖および遊走に対する阻害効果を示しました。 インビトロでアポトーシスを誘導する能力が低く、IHC染色でのカスパーゼ-3の発現が不十分であり、H-E染色で壊死領域が増加していることから、DIBによる治療群では壊死が細胞死に重要な役割を果たしていることが示された。 上皮間葉転換(EMT)マーカーのRT-PCR、ウェスタンブロット、およびIHC染色により、EMTがDIBによって個別に抑制されることが示唆され、マウス実験では、生体内での安全な抗腫瘍効果が示されました。 上記結果をSirt3 活性化剤ホノキオール (HK) とともにまとめて論文を作成し雑誌に掲載されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の浸潤性膀胱癌に続いて去勢抵抗性前立腺癌でも上皮間葉転換(EMT)の抑制とアポトーシスへの誘導による抗腫瘍効果が認められ、生体内でも安全に作用することがすべてin vivo in vitro双方で示されている。 分子レベルでの調査の準備も進めており、次年度には更なる成果について報告できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では膀胱がんに対する抗腫瘍効果のみならず去勢抵抗性前立腺癌に対する抗腫瘍効果についても一定の成果を得られたと考えており、さらに腎細胞癌に対する抗腫瘍効果(アポトーシス誘導効果・EMT阻害効果)の解析も必要と考えられ、こちらも腎細胞がんのポピュラーな組織型の一つである明細胞癌の細胞株に対し同様にMTTaasayによる細胞増殖分析・Annexin V assayアポトーシス誘導効果解析・創傷治癒分析によるがん細胞の浸潤・遊走にたいする阻害効果・リアルタイムPCRおよびウェスタンブロット法によるEMT阻害効果分析・摘出腫瘍の免疫阻止学的染色によるマーカーの検討を進めており、来年度末に成果について報告できる形を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
膀胱癌・去勢抵抗性前立腺癌の実験が順調に推移した結果予算に余剰が生じたと考えられる。 腎細胞がんは現時点では明細胞癌のみでの検討を予定しているが、非明細胞癌への抗腫瘍効果の検討を追加することも有用と考えられ、次年度使用金を充てていく方針である。
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