研究課題
進行性腎細胞癌の治療戦略は血管新生阻害剤に代表される種々の分子標的治療薬の出現により大きく変化したが、薬剤耐性が獲得され治療抵抗性となるため生命予後の改善は限定的である。近年、細胞外小胞の一つであるエクソソームが細胞間コミュニケーションの担い手として注目されている。今年度は、エクソソームがもたらす「がんの代謝」についてアプローチした。グルタミン代謝はがんにおける最も重要な代謝過程の一つと考えられている。Solute carrier family 1 member 5 (SLC1A5)は、グルタミン輸送体として機能するナトリウムチャネルである。様々ながん種において、SLC1A5遺伝子の発現が亢進しており、SLC1A5を阻害することでがん細胞の増殖が抑制されることが知られている。しかし、淡明細胞腎細胞がん(ccRCC)におけるSLC1A5の関与は不明である。そこで、本研究では、The Cancer Genome Atlasデータベースを用いて、ccRCCにおけるSLC1A5の臨床的重要性を評価した。その結果、SLC1A5がccRCCにおける生存率低下の予後因子であることが確認された。さらに、ヒトccRCC細胞株(A498およびCaki1)において、低分子干渉RNAまたはSLC1A5阻害剤(V9302)を用いた機能喪失アッセイにより、SLC1A5の阻害が腫瘍増殖、浸潤、移動を有意に抑制することを示した。さらに、生体内でV9302によるSLC1A5の阻害を行うと、腫瘍の成長が有意に抑制され、SLC1A5阻害の抗腫瘍効果は細胞の老化と関連していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに実験を進め、論文化できた。
さらに他のパスウェイ解析を進めていく
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 611 ページ: 99-106
10.1016/j.bbrc.2022.04.068.