研究実績の概要 |
まずは今回の先行研究においてホルマリン誘発性前立腺炎モデルラットを用いてNGF、BDNFの各Trkとの結合を非選択的Trk阻害薬(GNF 5837)の経口投与を行うことで評価した。 【方法】8 -9週齢の雄SD ラットを①Sham群(非モデルラットへ溶媒投与)、②対照群(前立腺炎モデルラットへ溶媒投与)、③治療群(前立腺炎モデルラットへ治療薬投与) の3群に分けた。モデルラット作製の18日後、非選択的Trk阻害薬(GNF 5837)またはその溶媒を1日1回、10日間連続で経口投与した。その後、覚醒下で膀胱内圧測定を施行した後に組織採取後、組織学的分析、リアルタイムPCRによるmRNAおよびELISA法による蛋白発現レベルを解析した。 【結果】治療群では無排尿性膀胱収縮と膀胱と前立腺におけるNGFおよびBDNFの蛋白発現量が対照群に比較して有意に低下し、Sham群とは差を認めなかった。また、対照群ではL6-S1 DRGにおける全てのTrk受容体サブタイプ(Trk A, B, C)とTRPV1のmRNAの発現量がSham群と比較して有意に増加したが、治療群では正常化した。【結論】 NGFとBDNFと各々の高親和性受容体であるTrkAとTrkBの結合が引き起こす作用メカニズムは慢性前立腺炎患者で認められる膀胱刺激症状の治療の標的となり得ることが示唆された 。2022年度は選択的TrkA阻害薬を2週間経口投与するラット群の治療効果を検証する予定であったが、ウクライナ・ロシア情勢の問題もあり選択的TrkA阻害薬の発注を行っているものの数カ月単位で入手が遅れていおり、こちらに関する研究が進んでいない状況である。
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