研究課題
[目的]非細菌性前立腺炎は頻尿や排尿時痛など様々な症状が起こしうるが、発症機序が不明確で有効な治療法も確立されていない。Tropomyosin receptor kinase (Trk)のサブタイプであるTrkAはnerve growth factor (NGF)の高親和性受容体で、非細菌性膀胱炎モデルラットの研究ではL6-S1後根神経節(dorsal root ganglion: DRG)での過剰発現が報告されている。本研究では非細菌性前立腺炎モデルラットを用いて、NGFとTrkAとの結合を阻害した後の膀胱過敏症に対する治療効果を検討した。[方法]7-8週齢の雄SDラットを①Sham群(非モデルラットへ溶媒投与)、②対照群(前立腺炎モデルラットへ溶媒投与)、③治療群(前立腺炎モデルラットへ治療薬投与)の3群に分けた。吸入麻酔下で前立腺腹背側葉の両葉に5%ホルマリンを50μlずつ注射し、非細菌性前立腺炎モデルラットを作成した。作成14日後、30 mg/kgの濃度に調整した選択的TrkA阻害(AR786)またはその溶媒を1日1回、14日間連続で経口投与した。その後、覚醒下で膀胱内圧測定を施行した後に膀胱、前立腺、L6-S1 DRGを採取し、組織学的分析、リアルタイムPCRによるmRNAレベルを解析した。[結果]治療群では無排尿性膀胱収縮(non-voiding contraction, NVC)および膀胱と前立腺におけるNGFのmRNA発現量が対照群に比較して有意に低下し、Sham群と同程度まで改善した。対照群ではL6-S1 DRGにおけるTrkAのmRNA発現量がSham群と比較して有意に増加したが、治療群では正常化した。[結論]NGFの高親和性受容体であるTrkAの結合が引き起こす作用メカニズムは、非細菌性前立腺炎患者の膀胱刺激症状の治療の標的となり得ることが示唆された。
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The Prostate
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