本研究目標は子宮内膜症の病態成立のための未知なる発症メカニズムの解明である。研究概要計画書では本研究において子宮内膜の線維芽細胞に発現する子宮内 膜症の原因分子と考えられるTAGLNについて、1)その発現誘導因子の検討、2)子宮内膜細胞内での詳細な機能解析、3)子宮内膜症マウスモデルでの検討を課題として掲げていた。R5年度の研究実績報告として、1)についてはR4年度に実験が終了しており、2)については子宮内膜繊維芽細胞を用いて細胞収縮に関連するミオカインの一種であるIL-6が線維芽細胞の増殖を促進することをIL-6添加MTTアッセイで確認した。3)についてはマウスTAGLN強制発現ベクターを作成し、エレクトロポレーション法を用いてTAGLNを子宮内膜組織に強制発現させる実験系に成功した。強制発現した子宮内膜組織の腹腔内移植により内膜症様病変部の数・重量ともに増加した。反対にTAGLNを発現抑制する遺伝子導入にて子宮内膜組織の腹腔内移植により内膜症様病変部の数・重量ともに低下した。これらのことからマウスモデルにおいてもTAGLNが子宮内膜症形成に重要な役割を担うことが示された。これまでの研究内容により子宮内膜症における線維芽細胞に発現するTAGLNの重要性及びその発現誘導因子について検討がなされ、より上流のTGFβを標的とした治療及び子宮内膜の微小環境に着目した新規治療戦略を練ることができると考えられた。本研究内容は論文投稿しScience Transltional Medicineに掲載された。
|