研究課題
生殖補助医療では体外受精技術が飛躍的に進歩した一方で、体外受精させて子宮内に胚移植した後の着床不全と不育症に対する治療法に改善が乏しい。そこで本研究ではTh1/Th2バランス説に基づいた流産モデルマウスを用いた動物実験を実施する。昨年度、流産モデルマウスの作成を行い、8~10週齢のC57BL6雌マウスを雄マウスと交配し、翌朝膣栓を確認し妊娠0日目と定義した。妊娠10日目に体重に基づきControl群(C群)、リポ多糖(LPS)群(L群)、及びLPS+Phosphodiesterase 5阻害薬(LT群)に分け、LT群にPhosphodiesterase 5阻害薬溶液の自由飲水を開始した。妊娠11日目にL群とLT群にLPSを、C群には生理食塩水を腹腔内投与し、一部のマウスは腹腔内投与2時間後に採血と胎盤の採取を行った。残りのマウスは妊娠14日目に犠牲剖検を行い、流産の程度、胎盤重量、胎児重量の計測を実施した。妊娠14日目の胎盤は4%PFAで固定後パラフィン包埋を行った。その後HE染色を行い、障害の程度をnecrosisスコアにより評価した。妊娠11日目に採取した血漿中のTNFα濃度IL-1βの計測はELISA法によって実施した。流産率はC群に比べてL群とLT群で有意に高く、L群と比べてLT群では有意に低かった。胎児重量もC群よりL群とLT群で有意に低く、L群と比較してLT群では有意に高かった。necrosisスコアはC群と比較してL群とLT群で有意に高く、L群に対してLT群で有意に低かった。血漿TNFα濃度はL群と比較してLT群は有意に低かった。血漿IL-1βはC群に比べてL群とLT群で有意に高く、L群と比べてLT群では有意に低かった。Phosphodiesterase 5阻害薬流産率が有意に低下し、胎児重量の減少も抑えられることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
今までの結果により、Phosphodiesterase 5阻害薬処理によって流産率が有意に低下し、胎児重量の減少も抑えられることが確認された。これはnecrosisスコアおよび炎症性サイトカインの結果からTadが胎盤の炎症反応および胎盤の傷害を抑制することによるものと考えられる。これらの結果は、Phosphodiesterase 5阻害薬が免疫機構の異常による流産のリスクを軽減する可能性があることを示唆している。目標としていた事項は確認できたため、順調に進行していると考える。
妊娠11日目に採取した血漿中のTNFα濃度IL-1βの計測はELISA法によって実施し、今後解析を行う予定である。
次年度の使用額は13,786円であり、想定範囲内の繰越金である。ELISA法によってTNFα濃度IL-1βを計測し、解析を行う予定である。
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