研究課題/領域番号 |
22K16842
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
木田 可奈子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20464852)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧腎症 / (プロ) レニン受容体 [(P)RR] / 低酸素 / ピルビン酸脱水素酵素 / 妊娠高血圧腎症ラットモデル (RUPP ラット) |
研究実績の概要 |
妊娠14日目のSDラットにおいて、総腸骨動脈分岐部直上および両側子宮動静脈へのクリッピング術を行い、子宮灌流圧低下(Reduced Uterine Perfusion Pressure:RUPP)を誘発させ、妊娠高血圧腎症ラットモデルを作製した(RUPP群)。妊娠21日目に胎仔・胎盤を摘出し、重量を測定した。胎盤は組織学的解析[HE染色、マッソン・トリクローム染色、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察]、定量的PCR法を用いたmRNA発現量解析[(P)RR、PDHB、低酸素誘導因子1α(HIF1a)]、ウエスタンブロット法を用いたタンパク発現解析[(P)RR、s(P)RR、PDHB、HIF1a]を行った。さらに、胎盤組織内の乳酸量及びピルビン酸量、PDH活性も測定した。全ての実験結果は偽手術(Sham)群と比較した。その結果、RUPP群の胎盤重量はSham群と比較して軽いことが示された。胎仔の重量も同様にSham群と比較して、RUPP群は低値であった。組織学解析ではRUPP群の胎盤で胎盤絨毛間質の線維化と血管内皮障害が見られた。HIF1aのmRNA発現量およびタンパク発現量は、Sham群と比べRUPP群で有意に高く、手術によるRUPPの誘発が確認された。 (P)RR及びPDHBのmRNA発現量は両群間で差はなかった。(P)RRタンパク発現量は両群間で差はなかったが、s(P)RRタンパク発現量はRUPP群で有意に高かった。乳酸量とピルビン酸量、およびPDH活性は、両群間で差はなかった。これまでの結果から、胎盤組織において、RUPPによってもPDH活性は低下せず、s(P)RRは増加を示した。RUPP状態では、ミトコンドリア酸化的代謝を維持するために、s(P)RRが増加する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物モデルは現在実験を継続し、データ集積中である。当初計画通り実験は進行し、良い結果が出ている。ここまでの状況から、進行具合としてはおおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)非妊娠時、通常妊娠時、RUPP妊娠時の血圧変動比較と尿蛋白量の比較。 妊娠高血圧腎症の研究では、血圧変動解析と尿蛋白量解析は非常に重要な実験である。テレメトリー埋め込み術、24時間畜尿を行い血圧変動と尿蛋白量を比較検討する。 (2)RUPPラットの血中および胎盤組織中の sFlt-1(soluble fms-like tyrosine kinase 1) sENG(soluble Endoglin )発現量解析。 ヒト妊娠高血圧腎症発症胎盤では、らせん動脈のリモデリング不全が胎盤絨毛間質の低酸素を惹起し、絨毛細胞でのsFlt-1およびsENGの産生増加が、PlGF(Placental growth factor)やVEGF(Vascular endothelial growth factor)を低下させ胎盤血管新生を抑制させる。RUPPラットにおいても、同様の事が起こっているかを解析することが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費の未使用分の繰り越しのため. 次年度も同動物モデルの作成・解析,および研究者が国際会議や学会に参加し研究成果を発表するための旅費や参加費用などに使用する予定である.
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