研究課題
2023年度は扁平円柱上皮境界(SCJ)オルガノイドを用いた検討をおこなった。子宮頸部のSCJ領域はHuman papillomavirus(HPV)感染が生じる部位であると考えられており、このSCJ領域の細胞をオルガノイド培養により実験的に再現した。まず、HPV18型の初期プロモーター活性をGFP発現でモニタリングできるLentivirusベクターを構築し、このベクターをSCJオルガノイドに導入した。GFP発光強度に基づくシングルセルソーティングを行い、HPV18型初期プロモーターが活性化した細胞の特徴を解析した。single-cell RNA sequencingではこれらの細胞で169遺伝子の有意な発現上昇を確認した。HPV18型を導入したNIKS細胞株に対してsiRNA knockdownを行ったところ、これら169遺伝子のうちNPM3遺伝子はknockdownにより幹細胞多能性に関わるpathwayが有意に発現低下した。本研究は混合癌に着目した解析と、SCJオルガノイドの解析により、子宮頸癌の起源細胞を同定するとともに、HPV感染による分化・発癌機構を解明することを目的とした。まず混合癌に関しては、HPV18型陽性子宮頸癌のうち混合癌症例についてクローン解析および微量RNA seq解析をおこない、複数の組織型は共通の細胞起源を有すること、またHPVインテグレーションは組織型の分化前の共通起源細胞において既に起こっていることを示した。さらに、組織型ごとのヒト遺伝子解析では、幹細胞の性質を有する細胞を維持していることが分かった。この結果から、子宮頸癌の起源細胞が幹細胞であり、発癌後に組織型分化するという仮説が考えられた。SCJオルガノイドの検討では、SCJ領域におけるHPV18型の感染を実験的に再現し、HPV18型の初期複製に関わるNPM3という細胞内分子を同定した。
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Cancer Science
巻: 115 ページ: 125~138
10.1111/cas.15988