研究課題/領域番号 |
22K16858
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉山 麻衣 名古屋大学, 医学系研究科, 客員研究者 (80936550)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 癌関連腹膜中皮細胞 / Notchシグナル / 腫瘍内不均一性 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、卵巣癌腹膜播種微小環境形成において、卵巣癌-OCAMs間のNotchシグナルを介した直接的な異種細胞間クロストークが、卵巣癌細胞の細胞運命を変化させ、環境誘導性に一部の腫瘍内不均一性を形成するのではないかと考えた。本研究では、独自に樹立したNotchシグナル可視化卵巣癌細胞株を使用して、in vitro/in vivoにおいてNotchシグナルの活性化をイメージングし、活性化細胞と非活性化細胞における薬剤抵抗性の相違や関連するメカニズムを詳細に解明するとともに、Notchシグナルの起点となるOCAMsを治療標的として、治療候補物質を探索する。 本年度には①Notch活性化細胞における遺伝子発現変化の解析の為、上述したNotchシグナル可視化卵巣癌細胞株をOCAMsと共培養するin vitro腹膜播種モデルにおいて、Notch活性化・非活性化細胞をフローサイトメトリーにより分取してRNAシーケンスを行った。研究代表者らはこの解析結果から、Notch活性化細胞における薬剤抵抗性に関わるメカニズムの候補を見出した。さらに、②Notch活性化細胞における薬剤抵抗性の評価のため、同様の実験系にシスプラチン等既存の殺細胞性抗癌剤を投与し、Notch活性化と薬剤抵抗性の相関を検証した。研究代表者らは、Notch活性化を抑制することで薬剤抵抗性を下げる効果を確認した。この様に研究代表者らは卵巣癌腹膜播種微小環境、特に腹膜中皮細胞と卵巣癌細胞との相互作用において、Notchシグナル活性化による腫瘍内不均一性形成と薬剤抵抗性獲得のメカニズムの一端を明らかにした。 今後、OCAMsで発現するNotch活性化の起点となる候補遺伝子の発現を制御する治療候補物質探索のため、細胞株樹立等評価系構築を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAシーケンス解析のデータからNotch活性化細胞における薬剤抵抗性に関与するメカニズムの候補が絞られた。また、Notch活性化と薬剤抵抗性の相関を検証するための評価系も樹立でき、順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、OCAMsで発現するNotch活性化の起点となる候補遺伝子の発現を制御する治療候補物質探索のため、細胞株樹立等評価系構築を進める。評価系構築後はケミカルライブラリーを用いたスクリーニングを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2022年度計画では、Notch活性化細胞における薬剤抵抗性の評価を行うにあたり、Notchシグナルを阻害する中和抗体による薬剤抵抗性の変化を検証する予定であった。しかし、研究過程でトランスポーターが関与することがRNA-seq等の解析により強く示唆され、新たな知見として得ることが出来た。このことから計画変更を行い、中和抗体等の購入を一旦停止したため2022年度に未使用額が生じた。 本研究目的を遂行するにあたりトランスポーターの関与を詳細に検討するため、当初計画を変更する必要があると判断した。2023年度計画では、トランスポーターに着目したメカニズムの解明を進めるため、阻害剤やsiRNAによるトランスポーター機能阻害、動物を用いた効果検証等に2022年度未使用額を使用する予定である。
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