研究課題/領域番号 |
22K16859
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
角田 守 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (30923031)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ATP7B / プラチナ抵抗性卵巣がん / CuSO4 |
研究実績の概要 |
卵巣がん細胞株(A2780、OVSAHO、SKOV3並びにシスプラチン低濃度暴露を繰り返すことにより作成したプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株(A2780cisR、OVSAHOcisR、SKOV3cisR)においてATP7Bの発現の変化並びにプラチナ製剤の50%阻害濃度(IC50)を測定し、プラチナ抵抗性卵巣癌細胞株を樹立した。また臨床検体においても、2017年~2021年の間に大阪大学医学部附属病院で手術が行われた276例の卵巣がんにおいて、VECTASTAIN ABC kit(Vector Laboratories)を用いてATP7Bの発現を確認したところ、ATP7Bの発現は144例(52.1%)に認めた。またATP7Bの発現を認めた144例においては5年生存率は22%であったのに対して、ATP7Bの発現を認めなかった132例の5年生存率は43%と有意に予後不良であった。次にATP7Bを高発現しているプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株において、siRNAを用いてATP7Bをノックダウンし、IC50値の低下すなわちプラチナ抵抗性の改善を確認した。またInductively Coupled Plasma Mass Spectrometry (ICP-MS) 法を用いて、卵巣がん細胞株と比べてプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株において細胞内プラチナ蓄積量が低下していることを確認し、ATP7Bをノックダウンすることによりプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株において細胞内プラチナ蓄積量が増加していることを確認した。pRSベクター (OriGene) を用いたATP7BのshRNAをプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株に遺伝子導入し、恒常的にATP7Bの発現を抑制した細胞株を作成し、細胞内プラチナ蓄積量が上昇していること、IC50値が低下していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行程自体は順調ですが、なかなか時間が足りないため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はプラチナ抵抗性卵巣がん細胞株並びに恒常的にATP7Bをノックダウンした卵巣がん細胞株をICR nu/nu mice (Charles River Japan)に皮下移植したモデルを用いて、それぞれにおいてCisplatinによる抗腫瘍効果を確認する。 プラチナ抵抗性卵巣がん細胞株において、細胞毒性がなくかつATP7Bの発現が増強しないCuSO4濃度を検討し、免疫蛍光染色を用い細胞内にあるATP7Bが細胞膜へ移動していることを確認する。 CuSO4をpremedicationとして用いることで、CisplatinのIC50値並びに細胞内プラチナ蓄積量がどのように変化するかを評価する。 プラチナ抵抗性卵巣がん細胞株をICR nu/nu miceに皮下移植したin vivoモデルにおいて、premedicationを行わない群、premedicationとしてCuSO4 (0.25mg/kg)を投与したlow dose群、premedicationとしてCuSO4 (1mg/kg)を投与したhigh dose群において、それぞれプラチナ感受性がどのように変化するかを評価する。また、それぞれの群において、Cuの血中濃度や貧血、生化学検査にて臓器障害が起こっていないかを検討する。 同様に、超免疫不全マウスに卵巣がん患者組織を移植したPDXマウスに対してATP7Bの発現を確認する。その後、PDXマウスに対してCuSO4によるpremedicationを行った上でプラチナ製剤の投与による治療を行い、実際の癌患者でもATP7Bを標的とすることでプラチナ製剤の抗腫瘍効果が認められることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き物品購入を行う予定であるため、少額の残高は使い切らず繰り越しとした。
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