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2023 年度 実施状況報告書

上皮性卵巣癌の治療過程におけるマクロファージ制御の有用性に関する検討

研究課題

研究課題/領域番号 22K16861
研究機関熊本大学

研究代表者

坪木 純子  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70772408)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード卵巣癌 / マクロファージ / 婦人科腫瘍
研究実績の概要

近年、多くの悪性腫瘍の進展や治療抵抗性において、癌細胞をそれを取り巻く腫瘍微小環境Tumor microenvironmentが非常に重要な役割を果たしていることが知られている。これまでの解析の結果、様々な固形癌の組織中において、マクロファージの浸潤密度が高くなるにつれてその予後が不良となることが明らかにされている。マクロファージはその活性化の様式から抗腫瘍効果を示すM1型と抗炎症作用を示すM2型に分類される。Tumor-associated macrophage(TAM)は、特にM2型への活性化を受けていることが示されている。そして、これらのM2型のTAMは、IL-10、TGF-β、Prostaglandin E2などの抗炎症生因子の産生や制御性T細胞の浸潤を促進することで、抗腫瘍免疫を抑制し、癌細胞の進展にとって有利な腫瘍微小環境の形成に密接に関わっている。
最近われわれは、婦人科悪性腫瘍の中で最も予後不良であることが知られている卵巣癌の進展、転移の過程において、腹腔内のがん微小環境の構成要素の一つであるマクロファージが腫瘍形成促進の性格を有するM2マクロファージに分化することで、卵巣癌細胞と共依存的な細胞間相互作用を有していることを明らかにした。
本研究では、卵巣癌の治療抵抗性におけるマクロファージの機能的役割を明らかにすることを目的とし、最終的にはマクロファージのM2分化を制御する薬剤を用いた新たな治療戦略の開発を目指す。
われわれが行ったこれまでの研究において、卵巣癌幹細胞とマクロファージとの細胞間相互作用が示されているため、今後はこれらのクロストークにおける分子機構を明らかにするために、網羅的遺伝子解析や空間的遺伝子解析をすすめる予定としている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究にて、これまでにわれわれが行った解析の結果からは、特に卵巣癌の進展の過程におけるM2マクロファージが有する分子生物学的な特性が明らかにされており、今後も網羅的な解析を継続して行っていく予定である。
実際に、卵巣癌high-grade serous carcinomaの腹膜播種病巣の組織切片を用いて、卵巣癌幹細胞として機能するCD44 variant6陽性細胞とTAMとの関連性について解析を行った。連続切片を用いて、卵巣癌の癌肝細胞マーカー、そして汎マクロファージのマーカーであるCD68、さらに、M2マクロファージのマーカーであるCD163の免疫染色を行った結果、癌幹細胞周囲の組織において、より多くのCD68陽性のTAM の集積がみられており、さらにその大部分は、CD163陽性のM2マクロファージに分化しているといった結果が明らかにされた。
今後、これらの卵巣癌幹細胞とマクロファージとのクロストークに関わる決定的な分子機構の解明をすすめるために、網羅的遺伝子解析を予定している。

今後の研究の推進方策

卵巣癌の腹膜播種病巣の形成の過程において、マクロファージの関与が示唆されている。今回の研究にて、卵巣癌幹細胞とマクロファージとの細胞間相互作用が示されたことから、今後は、これらのクロストークにおけるサイトカインやケモカインなどを含めた分子機構を明らかにするために、網羅的遺伝子解析や空間的遺伝子解析をすすめる予定としている。

次年度使用額が生じた理由

今回、申請者の妊娠、出産の時期と重なってしまい、当初していた研究活動に十分な時間をかけることができなかった状況にあった。今後、育児とのバランスをとりつつ、できることから研究再開をすすめている。

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公開日: 2024-12-25  

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