研究課題/領域番号 |
22K16868
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村上 幸祐 近畿大学, 医学部, 講師 (60734671)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 卵巣明細胞がん / 腫瘍免疫 / IL-6 / IL-17 / Th17 / 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究実績の概要 |
卵巣明細胞がんの腫瘍免疫機構について、特に卵巣明細胞がんに特徴的な高IL-6環境がもたらす腫瘍免疫微小環境に着目して研究を進めている。これまでの研究から、ヒト卵巣明細胞がんのin houseおよび大規模な卵巣がん臨床試験に紐づいたRNAシーケンシングデータのバイオインフォマティクス解析により、卵巣明細胞がんの持つ高IL6環境がTh17への分化誘導を介してIL17産生する腫瘍免疫微小環境をもたらすこと、この特徴は卵巣明細胞癌シグニチャーと相関すること、さらにこれが免疫チェックポイント阻害薬奏効のバイオマーカーとなりうる可能性を見出した。さらに、これらのデータから得られた現象が、実際に生体内でどのように機能しているのか、我々が樹立した近交系卵巣明細胞がんマウスモデルを用いて検証を進めてきた。IL17そのものはマウス卵巣明細胞がん細胞の炎症性サイトカイン分泌を促し、増殖が促進された。一方で、発癌させたマウスにIL17を投与し、腫瘍内のT細胞をフローサイトメトリーで調べると、疲弊したT細胞が多く浸潤してくることがわかった。また、この腫瘍を摘出してシングルセルRNAシーケンシングを行い、再現性が確認された。さらに、Th17を高発現するRorgトランスジェニックマウスからT細胞を抽出し、卵巣明細胞がんマウスに移注して生体内で高Th17・高IL17環境を維持しながら免疫チェックポイント阻害薬を投与すると、有意に予後が延長することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、特にマウスモデルを用いた腫瘍免疫微小環境の解析を重点的に行い、ヒトのデータから得られた現象が、実際に生体内でどのように機能しているのか、我々が樹立した近交系卵巣明細胞がんマウスモデルを用いて検証を進めてきた。IL17そのものはマウス卵巣明細胞がん細胞の炎症性サイトカイン分泌を促し、増殖が促進された。一方で、発癌させたマウスにIL17を投与し、腫瘍内のT細胞をフローサイトメトリーで調べると、疲弊したT細胞が多く浸潤してくることがわかった。また、この腫瘍を摘出してシングルセルRNAシーケンシングを行い、再現性が確認された。さらに、Th17を高発現するRorgトランスジェニックマウスからT細胞を抽出し、卵巣明細胞がんマウスに移注して生体内で高Th17・高IL17環境を維持しながら免疫チェックポイント阻害薬を投与すると、有意に予後が延長することがわかった。したがって、研究計画から鑑みて、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにマウスのデータを頑健にするために、個体数を増やして検証を行う。さらに、マウス腫瘍のシングルセルRNAシーケンシングの解析を進める。また、現在新鮮なヒト卵巣明細胞がんサンプルを収集しており、5例を目標に揃い次第、シングルセルRNAシーケンシングの解析を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は主にマウスを用いた研究を中心に行ったが、すでに所有している試薬および研究室共用の試薬を用いる機会があり、当初の予定よりも使用額がわずかに少なくなった。今後、卵巣明細胞がん細胞株のRNAシーケンシングを4サンプル増やす計画を立てており、次年度に繰り越した分を使用する予定とする。
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