これまでに複数種類の唾液腺癌の手術検体から継代可能なオルガノイド培養に成功しており、その成果については現在論文投稿中である。唾液腺癌の患者由来検体の培養の一つの大きな障壁として、定期的な検体の入手が困難である点がある。また、術前に良悪性を確定診断することは困難である。そこで申請者らは唾液腺腫瘍で最も多い良性腫瘍であるpleomorphic adenomaが術前に疑われた症例や境界悪性と診断された症例にも対象を拡大して、手術検体および生検検体の採集を行った。 その結果、良性腫瘍の手術検体が5例(pleomorphic adenoma4例、warthin tumor1例)が得られ、pleomorphic adenomaの3例とwarthin tumorの1例からオルガノイド培養・二次元培養いずれにおいても継代可能な細胞株を得られた。 また、18Gy針による穿刺吸引細胞診によって得られた4症例の内訳はmucoepidermoid carcinoma2例、salivary duct carcinoma1例、pleomorphic adenoma1例であった。オルガノイド培養および二次元培養を行った結果、オルガノイド培養はpleomorphid adenomaの1例のみ、二次元培養はpleomorphic adenomaの1例とmucoepidermoid carcinomaの1例で継代可能な細胞株が得られた。手術検体からはオルガノイド培養・二次元培養いずれも6-7割程度で継代可能な細胞株を得られていたことを鑑みると、やや低い成功率であった。一つの要因として、オルガノイド培養4例中2例で細菌感染によるコンタミネーションが生じたことが挙げられ、検体採取中の清潔の徹底、検体採取後の洗浄回数や酵素処理、抗菌薬の種類など検討予定である。
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