研究課題/領域番号 |
22K16894
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
多田 紘恵 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (90835745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 末梢血循環癌細胞 / 上皮間葉転換 / シングルセル解析 / 頭頸部癌 / MET |
研究実績の概要 |
頭頸部癌患者の末梢血循環癌細胞(Circulating Tumor Cells;CTCs)よりMET遺伝子の発現があるものを選択的に分離し、シングルセル解析(single cell RNA sequencing ; scRNA-seq)を行うことで、頭頸部癌の治療におけるバイオマーカーを探索することが目的とした本研究では、上皮系マーカーであるMET遺伝子の発現があるCTCsは予後不良であることを報告した自身の研究に基づいて行っている。本年度は、当研究室のCTCsの研究において、Human papillomavirus(HPV)関連頭頸部扁平上皮癌の循環癌細胞および腫瘍微小環境における上皮間葉転換関連遺伝子発現解析とその臨床的意義の検討を報告し、HPV陽性例において、SNAI1高発現のCTCsを有する患者が有意に予後良好であることを示し、さらに末梢血中の更に末梢血中の CD38陽性T細胞比率が有意に低いことを明らかにした。この研究はHPV 関連頭頸部扁平上皮癌のCTCsにおける上皮間葉転換関連遺伝子と腫瘍微小環境との関連を示唆する研究でもあり、本研究課題のCTCsのシングルセル解析への一助になると考えている。さらに患者末梢血における、NLR(好中球/リンパ球比),PLR(血小板/リンパ球比),LMR(リンパ球/好中球比)といったInflammatory blood markers に注目し、予後バイオマーカーとしての活用を研究中であり、有意な結果を得ているため、CTCs以外のバイオマーカーを用いながら、予後不良と思われる頭頸部癌患者の末梢血を選択的に集めることへの準備段階として整いつつある。このように引き続き患者末梢血を採取し、より悪性度の高いと推定されるCTCsを分離することで効率的なシングルセル解析の実現を目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では頭頸部癌におけるCTCsのシングルセル解析を主な目的として挙げているが、特徴としてより悪性度の高いと推定されるCTCsを分離しシングルセル解析を行うことで、効率的なシングルセル解析を目指すものである。その研究課程において、CTCsと上皮間葉転換の間に関連がある可能性があることが注目し、以下の研究課題について共著者として報告した。(Ida S, Takahashi H, Tada H, Mito I, Matsuyama T, Chikamatsu K. Dynamic changes of the EMT spectrum between circulating tumor cells and the tumor microenvironment in human papillomavirus-positive head and neck squamous cell carcinoma. Oral Oncol. 2023;137:106296.)しかしながら、実際のCTCsのシングルセル解析には至っておらず、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
CTCsのシングルセル解析を行うにあたって、当初はQIAGEN QIAscoutSystemを用いてCTCsを直接採取することを予定していたが、ごく微量の同CTCsを分離する方法より、進行頭頸部癌患者の末梢血をからCTCsを分離しCTCsの培養を行うことで、QIAGEN QIAscout Systemを用いてCTCsを直接採取よりより多くのCTCsを採取し、同じ特性もつCTCsの培養することで、高濃度かつ正確なCTCsの腫瘍特性を解析できるのではないか考えている。引き続き頭頸部癌患者の末梢血を採取し、CTCsの分離、および培養を目指し、シングルセル解析で有意な所見がでるよう研究を遂行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の達成を目的として、より悪性度の高い特性をもつCTCsを選択するため、準備段階の他研究を遂行していたため、本研究に対しては次年度使用額が生じた。翌年度からは、今年度の研究成果を考慮し、悪性度の高いCTCsをもつと思われる患者からの末梢血採血を順次行い、CTCsを分離し、効率的なシングルセル解析を目指す予定である。その際には、本年度で使用予定であった解析用の費用を翌年度に使用し、目標サンプル数の解析の達成を検討している。
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