研究課題/領域番号 |
22K16897
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 万純 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40875639)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | メニエール病 / 遅発性内リンパ水腫 / 中耳加圧療法 / 音響エネルギー / wideband tympanometry / 内リンパ水腫 |
研究実績の概要 |
本研究は難聴やめまい発作を繰り返すメニエール病・遅発性内リンパ水腫を主に対象とした内リンパ水腫関連疾患に対して、内リンパ水腫の形態的・質的な評価を行い、症状との関連について検討し、簡便に施行可能な新しい検査法の確立を目的としている。 内耳造影MRIにより内リンパ水腫が可視化され、特に前庭における内リンパ水腫がめまいを伴う内リンパ水腫関連疾患に与える影響が重要視されている。また近年MRIにおける外リンパの造影効果と内リンパ水腫の程度を組み合わせた評価が病状の活動性に影響するという報告もされはじめた。しかしMRIは内リンパ水腫の画像的診断に有用であるものの、簡便に経時的な変化を捉えることは難しい。従来の内リンパ水腫推定検査であるVEMPなどは簡便に行えるものの、陽性率は40-60%程度である。 近年難治性内リンパ水腫疾患に対して中耳加圧療法が保険適応になったように、外耳からの圧力により治療効果を得るほどの変動が起こる。Wideband Tympanometryは外耳道圧変化させることで、音響インピーダンスを測定するのみならず音響エネルギーの耳内への吸収率を測定できるため、前庭の内リンパ水腫が影響する吸収率を簡便に評価できることが示されている。 今年度は主にメニエール病、遅発性内リンパ水腫の患者、ほか変動性難聴やめまい感を呈する患者に対して、内耳造影MRIによる内リンパ水腫の程度・造影効果の形態的評価を行うとともに、内リンパ水腫の治療に伴う症状の変動と、聴力検査、VEMP、Wideband Tympanometryにより測定された内耳への音響エネルギーの吸収率の経時的変化の評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難治性メニエール病、遅発性内リンパ水腫の患者、ほか変動性難聴やめまい感を呈する内リンパ水腫関連疾患の患者20名に対して、内耳造影MRIによる内リンパ水腫の程度・造影効果の形態的評価を行うとともに、1か月間のめまい回数、聴力検査、VEMP、Wideband Tympanometryにより測定された内耳への音響エネルギーの吸収率の1年間の経時的変化の評価を行い、解析中である。 またメニエール病、感音難聴、めまい症、聴覚異常感の症状を呈する患者における活動性・非活動性について、1か月間のめまい回数、聴力検査、MRIとWideband Tympanometryを用いて評価した。MRIにおける内リンパ水腫の程度と外リンパの造影効果、Wideband Tympanometryにより測定された内耳への音響エネルギーの吸収率と、半年間の聴力変動・めまい発作の有無との関連性を解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
内リンパ水腫関連疾患、主に難治性メニエール病、遅発性内リンパ水腫の患者に対しての内耳造影MRIによる内リンパ水腫の程度・造影効果と、めまい回数、聴力検査、VEMP、Wideband Tympanometryにより測定された内耳への音響エネルギーの吸収率の1年間の経時的変化の評価について解析を行い、治療に伴う変化と形態的・質的評価をおこない、数値化して論文・国際的発表を行う。 MRIにて内リンパ水腫を呈する患者には二次的な非活動性の内リンパ水腫も含まれていると考えられており、内リンパ水腫の活動性・非活動性の評価を行う。めまい症状も聴力も変動するメニエール病、めまい症状のない感音難聴、難聴のないめまい症、難聴もめまいもない聴覚異常感の症状を呈する患者に対し、内リンパ水腫の程度と外リンパの造影効果、MRIとWideband Tympanometryにより測定された内耳への音響エネルギーの吸収率と、半年間のめまい回数、聴力変動の有無との関連を解析し、論文・国際的発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用機材の費用が値引き等により予定よりも少なくなったため。コロナ禍で出席予定の学術集会等がオンラインとなったことで縮小した経費もある。難治性メニエールや遅発性内リンパ水腫の患者を対象とした物品消耗品の使用が予定されていたが、患者の人数不足や、コロナ感染による受診控えにより消費されなかったため、次年度使用が生じた。次年度は現地開催の会議の増加が見込まれ、旅費や解析ソフト、論文に必要な諸経費に使用する。
|