研究課題/領域番号 |
22K16902
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
椋代 茂之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00821860)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 声帯瘢痕 / TGF-β1/Smad signaling / 選択的エストロゲン受容体修飾薬 / タモキシフェン |
研究実績の概要 |
声帯瘢痕は難治性線維化疾患である。音声障害による生活上のダメージは大きいため、新規治療法の開発が急務であるが、現在のところ根治的な治療法はない。 SERM (選択的エストロゲン受容体修飾薬) は骨粗鬆症や乳癌の治療薬として既に使用されている。近年になってSERMは諸臓器で抗線維化作用を有することが明らかになった。我々はこれまでに、エストロゲンが声帯損傷時にエストロゲン受容体(ERαやGPR30)を介して声帯線維芽細胞(VFFs)のTGF-β/Smad signalingに作用し、抗線維化作用を示すことを解明した。エストロゲンの副作用を解決するために開発されたSERMは、声帯においても安全かつ効率的に創傷治癒を促進させることが期待される。 我々は、昨年までに、第一世代SERMであるタモキシフェン(TAM)がVFFsのエストロゲン受容体を介しTGF-β1/Smad signalingに作用して抗線維化作用を示すことを明らかにした。 本年度は、声帯損傷へのTAM投与の効果を組織学的に検証した。10週齢雄SDラットの片側声帯を内視鏡下に損傷し、損傷5日前から7日後までTAM (50 mg/kg/day)を経口投与した。56日目に喉頭を摘出後、薄切凍結切片を作成してHE染色・AB染色・EVG染色をおこない、組織学的に声帯粘膜固有層を評価した。その結果、TAM投与群では粘膜固有層面積・ヒアルロン酸分布率が有意に増加しており、コラーゲン沈着率が有意に減少していた。以上からTAMは急性声帯損傷に対して、組織学的にも抗線維化効果を有することが示唆された。 これらの知見をLaryngoscope誌に掲載することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、TAMが培養声帯線維芽細胞のTGF-β1/Smad signalingに作用して抗線維化作用を示すことを明らかにした。本年度はラットの急性声帯損傷モデルを用いて、組織学的にもTAMが抗線維化効果を有することを明らかにできた。以上の得られた知見を論文化した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床応用に向けて、TAMの投与量や投与時期等の最適化を図る。慢性期の声帯瘢痕に対するTAMの効果も同様に検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には、声帯損傷モデルの作成にあたり旧型の細径内視鏡システムやモニターを使用したため、新規購入を見合わせた。そのため物品費に未使用額が生じたが、正確な声帯瘢痕の作成には、高解像度の内視鏡システムが必須であり、次年度以降に未使用額をその経費として使用したい。また、次年度以降には国際学会での発表を予定しており、未使用額をその経費としても使用したい。
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