研究課題/領域番号 |
22K16917
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
野田 昌生 自治医科大学, 医学部, 助教 (50756187)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 顔面神経 / 遺伝子導入 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の点について検討した。1) 条件を考慮した顔面神経へのAAV移行性の検討 昨年度の結果を考慮して、新たな条件を付加した上で顔面神経への遺伝子導入を試みた。キャプシド蛋白を改変したAAVベクターを用いて、複数のプロモーター、投与方法を行った。投与方法は、顔面神経切断部より浸透剤を用いた投与、末梢の筋組織への投与を用いた。AAV-GFPを用いて、GFP抗体による免疫染色で組織移行性について検討した。結果としては、神経断端からの投与で、顔面神経線維の一部にGFPの発現をみとめた。一方、筋注による投与では神経や神経核への移行をみとめなかった。条件を調整することで神経の一部に導入遺伝子の発現をみとめた。さらに多くの組織に発現をするために、プロモーターや投与方法、AAVのセロタイプについてこれまでの他文献を踏まえて検討している。
2)神経切断後・再建後の機能改善と中枢におけるグリア細胞の変化についての検討 神経再建後の病態について検討することで、神経切断後、中枢における神経細胞を温存するために必要なシグナルや炎症細胞の変化を検討した。昨年度は神経切断後、端端吻合によって再建した場合に、機能の約5割程度が改善をみとめ、神経細胞死は切断した場合と比較して優位に細胞死が抑制された。今回さらに、顔面神経核においては再建から長期間後においてもミクログリアの数が優位に増加しており、中枢におけるグリア細胞の制御が、顔面神経における神経細胞の温存に有用だと考えられた。本内容を成果として報告する準備を行うとともに、他ストレス関連因子の変異によって顔面神経核の温存にどのような影響を与えるか検討を続ける。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の投与方法により、顔面神経や神経核への遺伝子導入を試みており、一部の神経に導入が確認された。一方、顔面神経核には遺伝子導入が確認できていない。今後は、導入できる条件を検討するとともに、さらに末梢組織である筋組織への投与や、中枢への直接投与も考慮する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、顔面神経への遺伝子導入について検討するとともに、顔面神経麻痺や再建後の病態について検討していく。顔面神経麻痺や再建後の病態としては、炎症やストレスに関連した因子に焦点を当てて、神経障害後の顔面機能の改善や神経細胞死の影響についてさらに解析をすすめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
顔面神経への遺伝子導入効率が向上せず、新規に導入する実験計画が開始されていない。遺伝子導入効率を上げるための導入方法について、さらに詳細に検討を行う。
|