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2022 年度 実施状況報告書

Type2炎症による鼻粘膜支持組織への影響

研究課題

研究課題/領域番号 22K16923
研究機関北海道大学

研究代表者

鈴木 正宣  北海道大学, 医学研究院, 助教 (70455658)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード好酸球性副鼻腔炎 / 慢性副鼻腔炎 / 鼻ポリープ
研究実績の概要

Type2炎症による鼻粘膜支持組織への影響
近年、難治性副鼻腔炎は増加傾向にある。中でも鼻茸を伴う副鼻腔炎 (Chronic rhinosinusitis with nasal polyps; CRSwNP 好酸球性副鼻腔炎の多くの症例がこれに該当する。ヨーロッパの最新のガイドラインEPOS2020ではPrimary, diffuse, Type2, CRSに分類される)に対して治療戦略上のブレイクスルーが期待されている。その病態はA. 鼻粘膜上皮のバリア機能の低下を背景としたTSLPやインターロイキン33等のサイトカイン産生亢進を契機に、B. Th2優位の免疫応答(Type2炎症)が生じ、その結果として、 C. リモデリングが生じフィブリン網形成やコラーゲンの低下による浮腫が遷延し、鼻茸が形成されると考えられている。好酸球性副鼻腔炎の臨床上の最大の特徴である鼻ポリープでは、支持組織であるコラーゲンが減少していることが明らかになっている。しかし現在までに、Type2炎症がこの発現制御にどのように関連しているかの詳細は不明である。そこで、本研究では、上皮細胞から始まるType2炎症カスケードがコラーゲン発現に与える影響を検討し、その制御因子を同定することを目的としている。
これまでに鼻粘膜組織から採取した鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞などの培養を開始しており、特に上皮細胞は気液界面の培養も行っている。また、副鼻腔炎の各サブタイプを含むTissue Micro Array (TMA)の作製を開始した。TMAがあれば、各種サイトカインやフィブリン網、コラーゲンやその制御因子の発現を免疫染色法で均一な条件のもとに検討できる。偏光顕微鏡を用いれば半定量化することもできる。TMAは健常例(鼻中隔手術や頭蓋底手術)を含む全50例を予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

すでに実験系で中心的な役割を占めるPrimary cellsの培養の最適化に成功している。各薬剤の投与タイミングや至適投与量の検討も終わっている。気液界面の培養(Air Liquid Interface (ALI) 培養)も行っており、バリア機能の評価にも成功している。線維芽細胞におけるコラーゲン発現の評価も、Ligandやその投与方法の特定や、Sirius red染色やqPCR法、ELISA法などの条件設定が終了し、今後、実際の症例由来の検体を無駄なく検討に回せる環境が整いつつある。
またコロナ禍で症例数が一時的に減ったものの、その後回復の兆しを認めており、今後多数の症例から得たサンプルを実験系に回すことができると考えられる。これらの臨床検体は好酸球浸潤数、CTスコア、ポリープスコア、呼吸機能、予後などの臨床情報が網羅的にデータベース化されており、効率的に基礎実験の結果と照合することができる環境が整いつつある。本研究においては、臨床検体数が研究の律速になるため、今後も症例の蓄積に力を注いでいきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

鼻粘膜組織から採取した鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞を培養し、各薬剤を投与、その影響を評価する。具体的には鼻粘膜上皮細胞には自然免疫リガンドの投与やS.aureusを感染させ、上皮由来のサイトカインの発現を評価する。線維芽細胞にはアスコルビン酸とともにType2サイトカインを投与し、アスコルビン酸によって誘導されるコラーゲン発現へのType2サイトカインの影響をqPCR法、免疫染色法、Westernbloting法、ELISA法で評価し、Wound healing assayで増殖能も検討する。Type2サイトカインによるコラーゲン発現の変化が確認された場合、抗IL-4/IL-13抗体を含む各種薬剤との共培養で線維芽細胞におけるコラーゲン発現の変化を検討する。
また、副鼻腔炎の各サブタイプを含むTissue Micro Array (TMA)の作製も進めていき、症例が蓄積次第、各種サイトカインやフィブリン網、コラーゲンやその制御因子の発現を免疫染色法で均一な条件のもとに検討する。偏光顕微鏡を用いれば半定量化する。
さらに、抗IL-4とIL-13抗体などを使用した症例のうち、投与前後での鼻粘膜検体が存在するものについては、コラーゲン発現やその上流であるTGF-bシグナルの各因子の発現を免疫染色法やqPCR法、Western blotting法で比較検討する。好酸球浸潤数、CTスコア、ポリープスコア、呼吸機能、予後などの臨床情報との関連を検討し、臨床的意義を探索する。

次年度使用額が生じた理由

今回の研究計画では、鼻粘膜組織から採取した鼻粘膜上皮細胞や線維芽細胞などの培養が必要であり、特に上皮細胞は気液界面の培養も行う計画であるが、この際には大量の培地や試薬を必要とする。Cell line化することはできないため、Primary cellでの研究が必要であることもこれに拍車をかける。しかし、今年度は実験条件の最適化が予想以上に早く進行したために、当初の予定以上の効率で実験を進めることができた。その結果、培地や試薬などの使用量を最小限に抑えることができた。また実験室には使用期限が迫っていた培地や試薬などが多量に残存していたため、そちらの仕様を優先することで、培地や試薬などの新規購入を最小限にすることができた。結果、想定を下回る使用額となったために、その差し引きの結果として次年度使用額が生じたこととなる。この次年度使用額を最大限に活かすために、今後は症例数の蓄積とそれによるさらに精度の高い検討を行っていきたいと考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] TRIM27 expression is associated with poor prognosis in sinonasal mucosal melanoma2023

    • 著者名/発表者名
      Kimura S、Suzuki M、Nakamaru Y、Kano S、Watanabe M、Honma A、Nakazono A、Tsushima N、Hatakeyama S、Homma A
    • 雑誌名

      Rhinology Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.4193/Rhin22.405

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Schlafen family member 11 indicates favorable prognosis of patients with head and neck cancer following platinum-based chemoradiotherapy2023

    • 著者名/発表者名
      Hamada Seijiro、Kano Satoshi、Murai Junko、Suzuki Takayoshi、Tsushima Nayuta、Mizumachi Takatsugu、Suzuki Masanobu、Takashima Tsuyoshi、Taniyama Daiki、Sakamoto Naoya、Fujioka Yoichiro、Ohba Yusuke、Homma Akihiro
    • 雑誌名

      Frontiers in Oncology

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fonc.2022.978875

  • [雑誌論文] Repetitive simulation training with novel 3D‐printed sinus models for functional endoscopic sinus surgeries2022

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Masanobu、Miyaji Kou、Watanabe Ryosuke、Suzuki Takayoshi、Matoba Kotaro、Nakazono Akira、Nakamaru Yuji、Konno Atsushi、Psaltis Alkis James、Abe Takashige、Homma Akihiro、Wormald Peter‐John
    • 雑誌名

      Laryngoscope Investigative Otolaryngology

      巻: 7 ページ: 943~954

    • DOI

      10.1002/lio2.873

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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